https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM159FF0V10C22A4000000
指標となる10年物国債の利回りは同米国債利回りを約12年ぶりに下回った。習近平(シー・ジンピン)指導部が堅持する「ゼロコロナ」政策で経済の下振れリスクが高まっているためだ。
米国を下回る中国の金利水準は、長期的には人口減少社会の到来と過剰債務という不都合な未来を映す鏡でもある。中国の21年の出生数は1949年の建国以来最も少なかった。2021年から解禁した3人目の出産政策の効果は乏しい。「一人っ子でも経済負担は大きい」(湖北省武漢市の女性)。一人っ子同士の夫婦が双方の両親4人と子ども1人、計5人の面倒を見なければならないケースが大半だからだ。
中国では今後、人口減少が確実視されている。国連の中位推計によると、中国の人口は10年後の32年に減少に転じる。
一方、米国は2100年まで一貫して人口増加が続く。低位推計でも、人口減が始まるのは48年からとなる。
人口が減少すると潜在成長率を押し下げ、デフレ圧力を通じて実質的な債務返済の増大をもたらす。国際決済銀行(BIS)によると、中国の民間企業債務(除く金融部門)はGDP比で161%(20年)。米国(85%)の2倍近い。約2兆元の負債を抱え、部分的な債務不履行(デフォルト)に陥った中国恒大集団がその象徴的存在と言える。
苦しむのは企業だけではない。人民銀の調査によると、中国の都市部の持ち家比率は9割を超す。一人っ子同士の夫婦の間に生まれた子どもは少なくとも3戸の住宅を相続する可能性が高い。建築ラッシュが続いた住宅の価格が下落に転じれば、投資目的で複数の住宅を保有する富裕層や不動産会社が売り急ぎ、負の循環を引き起こしかねない。中国に先行して人口減が続く日本はバブル崩壊後に長期停滞に陥った。
民間企業を抑え込みながら、経済は成長させていく――。中国はこんな矛盾した経済運営を急速な人口減少という逆風のなかで続けていけるのだろうか。足元の中国の金利低下はその道筋の険しさを映し出しているようにみえる。
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