https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60218830R20C22A4EP0000/
1つは為替介入に対する国際社会の認識だ。米欧の先進国は00年代以降はほとんど介入をしていない。米国は特に否定的で、大災害やテロなど危機対応のみ例外という姿勢がにじむ。
今は大規模金融緩和という日本政府の方針の結果、日米金利差が生まれ円安が進む基本構図がある。「介入について対外的に理解を得るのが非常に難しい」(財務省幹部)
一方で円買いは外貨準備が原資だ。3月末時点で1.3兆ドル(約167兆円)が事実上の限度額になる。「仮に踏み切った場合、投機筋は介入後の残高に注目して狙ってくる」(市場関係者)。外国為替市場の規模の大きさを考えると、簡単には切れないカードだ。
政治の関心も国民に分かりやすい政策に傾き、根源的な議論を欠く。夏の参院選を前に与野党ともに物価高や円安進行を警戒するが、近くまとまる物価高対策はガソリン補助金の上限引き上げなどばらまき要素の強い対症療法が並ぶ。
「物価上昇は長期化する可能性もある。エネルギー戦略など抜本策がなければ、為替の基調は変わらない可能性がある」(クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司氏)
明治学院大学の熊倉正修教授は「日本は長く『貿易立国』の意識が強く、為替介入を多用する先進国では特殊な国だった」と指摘する。G7などでは「相場の過度の変動や無秩序な動きを防ぐ目的」であれば介入は容認されるが、長期的に円売りに対抗するには地道に経済の生産性や競争力を上げるしかない。根本的な政策対応を欠く中、通貨当局の悩みは深い。
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