「東京のビジネス街はどこ」と聞かれ、思い浮かぶのは丸の内や六本木、IT(情報技術)関係では渋谷もそうでしょう。では、その近隣にはどのような人が住んでいるでしょう。
起業家、弁護士、コンサルタントといった時間単価が高い人々を想像した人が多そうです。一方、彼らと同じエリアで働いていても、例えば六本木ヒルズ内のコンビニ店員が六本木に住んでいると想像した人は少ないかもしれません。なぜそうした違いが生まれるのか。今回は賃金と住む場所の差の関係を考えます。
単純化して考えるため、東京のビジネス街は六本木だけで、全ての生産・商業活動が六本木で行われていると仮定します。世の中にはスキルの水準が異なる労働者がおり、その水準に応じて時給が異なります。コンビニの店員として働く人の時給は千円、弁護士の専門スキルを持つ人は時給5万円を稼ぐとします。
彼らはともに東京のどこかに住んで毎日、六本木に通勤します。では、郊外ではなく六本木に住むメリットは何でしょうか。答えは通勤時間の節約です。郊外からの通勤時間を往復1時間とすると、その時間を節約すれば1時間追加で働くことができます。重要なのは、この追加の労働時間がもたらす経済的利益が人によって異なることです。
1日1時間追加で働いた場合、コンビニ店員の追加収入は1日千円ですが、弁護士は5万円です。コンビニ店員にとって、郊外の家賃と六本木の家賃の差が1日あたり千円を超えると、通勤時間節約のために六本木に引っ越すメリットはなくなります。一方、弁護士は家賃の差が5万円を超えない限りは六本木に住む方が経済的に合理的です。
このように、便利な場所に住むことによるリターンの違いは、時間単価、つまりスキルの違いから生まれます。結果的に一番便利な場所には一番スキルが高い人が住み、一番便が悪い場所には一番スキルが低い人が住むことになります。
現実には住環境など様々な要素が加わります。そのため、これほど単純な話ではありませんが、人々が住む場所を決める要因の一つはこれで説明できます。
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