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清水章弘さん 「勉強は楽しい」伝えたい 塾経営者が学校改革

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60183960R20C22A4EAC000/

 

学習塾講師の経験も生かし、カリキュラム作成や授業、テスト、教員の研修などで全面的に協力する。予備校が協力する私立中学はいくつかあるが、学校スタッフとして関与するのは珍しい。

特進コースの生徒たちは校内塾で、英語と数学の学習内容を先取りし、まず要点を頭に入れる。授業では知識の定着や応用に取り組む。「考えることを楽しむ」を目指し、清水さんら塾の講師と教師が連携した。

協力を求められたとき「難しいのでは」と考えた。しかし、新たに若い教師を中心に採用するなど学校側の意欲は高い。清水さんの助言を聞きながら、教師たちは授業法などを互いに評価しながら高め合う。学校と塾が協力しながら「地方の中核都市に新たな教育のモデルを作りたい」と意気込む。

教育の世界に進むきっかけは、東京の海城中学での探究学習にあった。社会問題を調べて論文にまとめるため「ゆとり教育」を取り上げたテレビの討論番組を見た。教育評論家の尾木直樹さんや学者、経済界関係者ら出演者全員を取材して、教育への関心が高まった。東京大学に進学して起業すると、尾木さんから激励された。「学校の課題がきっかけで一生の仕事に出会えた」と感慨深げだ。

東大に現役合格した自らの勉強法と、大学、大学院で身につけた教育学の知識を駆使する。生徒のやる気を引き出すコーチングでは定評があり、大手予備校の駿台予備学校と提携したほか、私立中高の学習アドバイザーも務める。

「勉強は楽しいと伝えたい」。2010年に学習アドバイザーとなった青森県三戸町の中学校の体育館で、効率的な勉強のやり方などを講義すると、座っていた椅子を机にしてひたすらメモをとる生徒たちが多数出てきた。年に5~7回、三戸町へ出向き、教師や生徒に助言し続けた結果、県内で2割ほどだった有力進学校に入る生徒が、35%を超すまでになった。

一方で、20人の社員と30人のアルバイトを抱える経営者の顔も持っている。「教育改革を持続可能にするのにはどうすればいいか」。稼ぎを得ながら社会に貢献できるビジネスモデルの確立にも意欲を燃やす。