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衝突が続くロシア、ウクライナなどでも利用が増え、価格急落が起きにくくなっている。金融アセットの一つとして立ち位置を固めつつある。
シンガポールに拠点を置く交換所クーコインの調査によると、アフリカで1月までの1年間にビットコインを含む仮想通貨の取引件数は約15倍、利用者数も25倍に急増。物品の売買などの1万ドル未満の取引が9割近くを占める。
特に増えているのが取引所や金融機関を介さず個人や企業の間で直接やりとりするピア・ツー・ピア(P2P)取引だ。調査会社ユースフルチューリップによると3月、P2Pの取引量ではサハラ砂漠以南のアフリカが7800万ドルと、北米の7400万ドルを超えた。
取引所を介した取引が世界で1日10億ドル前後に対し、P2Pの割合は数%程度。5年ほど前はほぼゼロだったP2Pの成長余地は大きい。増加が目立つのがケニアやナイジェリアだ。
交換所ディーカレット(東京・千代田)の前田慶次ディレクターは「(親会社のシンガポールのアンバー・グループ全体で)侵攻後、ロシアからのビットコインの買い注文が多い状態が続いた」と話す。証拠は見つかっていないが、ロシアが制裁逃れに使うとの懸念は強い。
中南米やアジアでも広がる。ビットコインを法定通貨にしたエルサルバドルでは納税や飲食店などでの決済に使われる。ブラジルのリオデジャネイロ市は2023年からビットコインでの不動産関連の税金の支払いを許可すると発表した。
「投機だけでなく送金・決済などの実需が価格を支えている」とビットフライヤー(東京・港)の金光碧マーケットアナリストはみる。
ビットコイン価格は4万ドル前後で推移している。米金融引き締めやウクライナ情勢などで市場に悲観的な見方が広がる中、21年末比の下落率は12%程度にとどまる。同じく金融緩和マネーの受け皿となったハイテク株の指標の一つフィラデルフィア半導体株指数(SOX)の下落率20%と比べても小さい。
ただ仮想通貨の送金は把握しにくいため、ケニアなどの政府・中央銀行は警戒している。「合法性の担保が重要になる。そのうえで需要が増えるなら、仮想通貨の評価が変わる可能性がある」とマネックス証券の大槻奈那チーフ・アナリストは指摘する。

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