https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60151450Q2A420C2KNTP00
増える争い
相続を巡る家族内の争いは増えている。司法統計によると遺産の分割を巡って全国の家庭裁判所に持ち込まれた裁判・調停の件数は2020年に1万4617件。1995年比で1.5倍になった。
高齢者の割合が高まり、相続に関するセミナーや書籍などが多くなって一般の人たちが関心を持つ機会が増えたことなどが背景だ。
不動産販売・管理の日本財託グループ(東京・新宿)で相続対策などを助言してきた老後問題解決コンサルタントの横手彰太氏は「誰が親の介護をしたかなど不公平感が相続争いにつながりやすい」と説明する。
「そもそも親の財産は親が使うべきだと(子どもたちが)考えれば、もめることも少なくなる」とアドバイスする。
遺言を残すこともトラブル回避には有効だ。遺言には主に自ら書く「自筆証書遺言」と、法律の専門家が本人から内容を聞き取って作成する「公正証書遺言」がある。
遺言内容は具体的に
自筆証書遺言は必ず本人の自筆で書き、日付や氏名、押印を忘れないよう気をつけよう。説明書が付いた市販の作成キットを使うのもいいだろう。1通につき保管料3900円を払えば、法務局の遺言書保管所に預けられる。
柿沼氏は「いきなり遺言を書き始めるのではなく、まずはどれくらいの財産を持っているのか『棚卸し』から始めて」と話す。相続できる財産は預貯金や不動産、有価証券のほか車や宝石など多様だ。
預貯金は通帳のコピー、不動産は謄本、車は車検証など文書で分かるものを集めておけば、相続の手続きで困らないだろう。銀行や証券会社など第三者が見て、財産を特定できることがポイントだ。
遺言と一緒に「財産目録」としてリストにしておけば、財産が特定できないなどの問題を避けられる。司法書士などに相談するか、自分でパソコンなどを使って作成してもよい。
法定の配分を参考に
相続の配分で迷った場合は民法で定められた「法定相続分」を参考にしてみよう。婚姻や血縁関係をもとに相続人となる人の範囲や順位が決められている。
例えば配偶者と子ども3人がいる場合は、財産の2分の1を配偶者、残りの2分の1を子ども3人で分ける。配偶者と親のみだと、3分の2を配偶者、残りの3分の1を親で分ける。
遺言は法定相続よりも優先されるが、極端な配分などはトラブルの原因になりかねない。生前に家族で話し合い、それぞれの意向をくみ取るように意識することが大事だ。
柿沼氏は「親の介護の不公平感など争いの原因になりそうなことがある場合は、話し合うことが一番の予防になる」と強調する。
相続が原因で家族の関係が壊れれば元も子もない。相続する者同士が譲り合う気持ちを持てるようにすることも大切かもしれない。

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