https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60075470X10C22A4TB0000/
「体調が良くならないんですが」「お薬の服用回数は合っていますか」――。クオールは4月から対話アプリ「LINE」で処方箋の受付や薬剤師への服用相談ができるようにする。これまでは独自アプリで同様のサービスを提供していたが、高齢者を中心にダウンロードが難しいなどの課題があった。
LINEはスマホ購入時からインストールされている場合が多く、高齢者の利用率も上がっていることに対応する。今後はオンライン服薬指導もLINEでできないか検討しており、順次機能を拡充する方針だ。
診療はあくまで医師の仕事だが、日常的に患者の健康状態を把握しておけば、適切な処方や受診を促せるとみる。4月に解禁された「リフィル処方箋」は、医師の診断を受けずに最大3回にわたって繰り返し使える。薬剤師が患者の健康状態を把握する義務はこれまで以上に重い。
現在、電話のみも認められている服薬指導が今後、ビデオ電話のような形式も対象となるように医薬品医療機器法(薬機法)が改正される。
4月の診療報酬改定では、患者や地域への貢献度が求められ、処方箋1枚当たりの報酬が増える「地域支援体制加算」の対象が拡大される。従来は認められるか認められないかの2段階評価だったが、従来の約半額加算される中間評価が加わり3段階になった。
日常から患者の健康状態に気を配る「かかりつけ薬剤師」の指導料や在宅医療での薬剤管理の実績を含む3項目を満たすことが条件として加わった。
アインホールディングスはコミュニケーションアプリ「いつでもアイン薬局」の提供を始めた。ビデオ通話が可能でオンラインで服薬を指導し、薬は店舗で受け取るか、自宅まで配送するか選べる。
川崎市ではセブン―イレブン・ジャパンと連携し、セブンの一部店舗に設置した宅配ロッカーを処方薬の受取場所に指定できる。
また、アプリを通じて過去利用した薬局の薬剤師に薬の飲み合わせや健康について無料で相談できる。約1100店舗のほとんどで対応する。大谷喜一社長は「今後は健康分野を中心にどれだけサービスを充実させていけるかも重要だ」と話し、食事メニューなどの発信も検討している。
日本調剤は患者が体調不良時以外でも気軽に薬局などとやりとりできるプラットフォームを構築する。オンラインチャットなどを通じて正しく服薬しているかどうかや食生活についてデータを蓄積。患者ごとの特徴を把握することで、飲み忘れによる残薬発生の防止や処方薬の適正化などに活用する。
今後は運動状況や就寝時間といった患者の日常生活全般への健康支援も視野に入れる。医療機関や介護施設、食品などの事業会社と連携し、「有料サービスを展開する可能性もある」という。
2023年には電子処方箋も解禁され、今後も調剤薬局でのオンライン化対応が一層進む。一方で患者との最初の接点になる医師の意欲が追いついていない。
日本医師会によるとコロナ禍で診療のオンライン化が進む中でも、電子処方箋への署名に必要な資格を持つ医師は全体の約6%にとどまっている。
触診ができないことによる誤診への懸念に加え、大病院や人気クリニックへの患者の集中を警戒しているためだ。入り口となる診療がオンライン化されなければ、オンライン服薬指導の利用率も上がらない。
状況の改善には国の一層の関与が必要だ。経済協力開発機構(OECD)によると18年時点で、国が医療のデジタル化に積極的なフィンランドやエストニアでは電子処方箋比率はほぼ100%に達している。通院回数の減少による医療費の抑制などにつながった。ある調剤薬局大手は「日本でもデジタル庁が企業や業界の取り組みを促すことに期待したい」と訴えている。
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