https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFH047QS0U2A400C2000000
年内に解体が終わり、跡地には新しいビルが建設される。居室であるカプセルをブロックのように積み上げた外見が特徴的なこの建物は現代建築の代表的な存在として内外で評価が高く、取り外したカプセルの一部は美術館などに収蔵される計画という。
中銀カプセルタワービルは1972年完成。13階建てと11階建てのツインタワーで「ビジネスマンのセカンドハウス」として分譲された。床面積約10平方メートルのカプセルを一室として内部にはベッドやテレビ、バストイレなど生活に必要な設備が一通り完備されている。以前から老朽化を理由に建て替えの話が出ていたが、区分所有であることに加え、保存・再生を主張する声が強かったため決定までに時間がかかった。
ビルの保存に向けて運動してきた中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト代表の前田達之さん(55)は元住人の有志と共同でビルが見えるマンションの一室を借り、解体までの過程を定点観測する。前田さんは実際にビル内に居室を持ち、管理組合の役員でもあった。「解体はさびしいが、この建物はカプセルを取り外して再生させることができるのが救いだ」と話す。
黒川氏の事務所と組んで状態のよいカプセルを選んで内装を竣工当時のものに戻し、内外の美術館にカプセルを譲渡する話が進んでいるほか、再生したカプセルを宿泊施設として活用する「カプセル村」構想もあるという。「カプセルタワービルは住んだり使ったりしてファンになった人が多い。泊まれるカプセルを運営してこれからもファンを増やしたい」(前田さん)
中銀カプセルタワービルはカプセルを入れ替えることで建物が永遠の命を保つという黒川の思想「メタボリズム」を体現した建築とされる。実際には工事が困難なことから一度もカプセルが交換されることはなく、竣工からちょうど半世紀で解体を迎えた。

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