https://www.nikkei.com/article/DGKKZO60072850X10C22A4MM8000/
新型コロナウイルス禍をへて企業が新たな成長事業の立ち上げを急ぐなか、経験が豊富な人材への需要が高まっている。即戦力となる中高年の流動化が進めば経済の活性化につながる。
国内の転職は「35歳が限界」といわれてきた。年功序列的な要素が強い国内企業では、後から加わった中高年の活躍の場が限られるからだ。
しかし常識は変わり始めた。日本人材紹介事業協会がまとめる大手3社の紹介実績をみると、20年度には41歳以上の転職者数が約1万人と5年前の1.9倍に増えた。20~30代も増加しているが伸び率は41歳以上が最も大きい。41歳以上の内訳は40代と50代が大半を占めるとみられる。
中高年に特化した人材紹介サービスのシニアジョブ(東京・新宿)でも、21年末の登録者数が6万1500人と19年比で2.7倍に増えている。
背景には企業のリストラがある。東京商工リサーチによると早期退職や希望退職の募集を開示した上場企業数は21年に84社あった。69社は募集人数も公表しており計1万5892人にのぼる。
転職サイトでは退職を募った企業の社員の登録が増える。エン・ジャパンでは日本たばこ産業(JT)の出身者の登録が18年の3.1倍、青山商事は3.7倍になった。
職種間の待遇格差も広がっている。フロッグ(東京・千代田)が「リクナビNEXT」など8つの求人サイトの募集時の給与情報をもとに年収を算出したところ、エンジニアの年収は3年前と比べ12%、データサイエンティストは10%上がる一方、飲食や介護は上昇幅が3%にとどまる。
終身雇用や年功序列の慣習が崩れ、転職の選択肢はますます一般的になる。働き手にとっては年齢に縛られずリスキリング(学び直し)の機会を持てるかが重要になる。コロナ後の経済回復に向けて働く人が自らの価値を高めて活躍の場を得られるようにする環境の整備が欠かせない。
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