https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59874730R10C22A4TL5000/
デジタル時代の競争力の源泉は工場や店舗ではなく、革新的ビジネスを創造する「人的資本」という考え方からだ。有望銘柄を先回り買いしたい株式投資家は、社員が幸福かどうか内面まで推し量る。かつての勢いを失った日本企業の再生につながるか。
「費用としての人件費から、資産としての人的投資へ」。岸田政権の新しい資本主義実現会議でも、形には残らない人への投資を評価する方法論をさぐっている。コロナ下の世界経済を見渡すと、ビッグデータや人工知能(AI)エンジニアらのスキルといった無形資産で稼ぐ米アルファベット(グーグル)、アップルなど巨大IT(情報技術)プラットフォーマー「GAFAM」の圧倒的な強さが目を引くからだ。
雨後のタケノコのような「人財」アピールに対し、投資家は早くも選別に動く。企業の「ESG(環境・社会・企業統治)」と株価の関係を調べた資産運用会社、ニッセイアセットマネジメントは、将来の収益にダイレクトにつながる「S」が最重要という結論にたどり着いた。
同社の橋田伸也・株式運用部担当部長は「社外でのボランティア活動や寄付行為よりも、能力や意識を高める教育システムがあるかどうかをみる」という。「なにが企業価値の源泉なのかを表現できている会社はまだ少ない」(フィデリティ投信の井川智洋氏)との声も聞かれる。
熱意ある社員5% 「失われた30年」
米ギャラップの20年調査によると、士気が高く熱意のある社員の割合はGAFAMを生んだ米国が34%と世界で突出している。「失われた30年」で確たる成長の針路を見失った日本は世界最低レベルの5%に沈んでいるが、その分だけ伸びしろは大きい。
信用評価会社クレジット・プライシング・コーポレーション(東京・中央)は、日本企業のクチコミサイト「オープンワーク」に寄せられる社員の匿名投稿をAIで分析。個々の企業の働きがいのスコアを投資家に売っている。こうした人的資本評価によって経営者の意識が変われば、社員のやる気にも火が付くかもしれない。
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