https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59895340R10C22A4DTA000
大型施設「恵比寿ガーデンプレイス」(東京・渋谷)も開業から28年を迎え、投資がかさむことも懸念として浮上する。
サッポロHDの予想PER(株価収益率)をアサヒグループホールディングス、キリンホールディングスと比較すると、2019年末からの平均PERではアサヒが18倍、キリンが20倍に対してサッポロHDは28倍。不動産価値を反映して1株利益の額に対して株価が高めに推移している。
この間、20年12月期にはサッポロHDは食品飲料事業で減損損失を計上。セグメント事業損益(全社・消去前)は外食を含む酒類が24億円の黒字、食品飲料が26億円の赤字に対し、不動産は109億円の利益を稼いだ。00年以降、サッポロHDは不動産事業で平均100億円を稼ぐ。
日本のビール主要各社の合計数量は20年までの10年間で36%減った。アサヒやキリンは海外などに活路を求めるが、規模の小さいサッポロHDは不動産への依存度が高まることが避けられない。
「投資不動産」は貸借対照表上は前期末時点で2032億円だが、不動産価格の上昇で市場価値を反映した「含み益」をあわせると3829億円にのぼる。ただ、不動産の営業利益ベース(20年以降は事業利益)の総資産利益率(ROA)は、含み益を加味した実質的な資産で見ると10年間2~3%で横ばいが続く。
4月上旬、ガーデンプレイスはテナント入れ替え作業の真っ最中だった。1994年の開業以来入居していた三越が撤退し、スーパーマーケット「ライフ」などが15日に開業する予定だ。
スタートアップや個人事業主に向けたオフィス需要が強いとみて、商業施設の一部を小規模オフィスに切り替えるなど今年秋をメドにリニューアルを完了する。尾賀真城社長は「新たな機能と価値を生めるよう取り組んでいく」と意気込む。
ガーデンプレイスはテナント入れ替えに伴う改装投資などがかさむ段階にある。自然エネなどの導入、地震のゆれを軽減する装置設置のほか、10年で完了する空調設備の更新のために260億円を投資する。オフィスビル仲介大手の三鬼商事(東京・中央)によると、21年の恵比寿・広尾地区のオフィス平均空室率は8.79%と、13年(10.31%)以来の高水準で、需要も変調している。
サッポロHDは21年12月期に、固定資産の売却で400億円あまりのキャッシュを手にした。資金はガーデンプレイスの改装に充てるほか、リスク分散や収益向上を目的として、物件ポートフォリオの組み替えや、エクイティ投資などの新規事業を拡大する。先細り懸念の払拭には改革の果実を早期に示すことが欠かせない。

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