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[FT]穀物需給の引き締まりで上昇する米中西部の農地価格

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB031FX0T00C22A4000000

 

中西部の穀倉地帯の農地価格はこの1年で25〜30%上昇した。売りに出された土地をめぐり、激しい入札合戦が繰り広げられている。

ここ1カ月、ウクライナ紛争とロシアに対する経済制裁により、黒海沿岸地域からの極めて重要な小麦とトウモロコシの輸出が細るなかで農地の需要は膨らんでいる。国連の世界食料価格指数は2月、前年同月比で24ポイント上昇した。

不動産業界団体の米リアルターズ・ランド・インスティテュートによると、企業の農地所有を制限している中西部アイオワ州では、3月の農地購入者の構成比率が投資家35%、農家65%だった。2019年は投資家の比率が18%にとどまっていた。同団体によると、アイオワの農地価格はこの3月までの1年間に3割強上昇した。

TIAAや公的年金基金などの大手機関投資家は以前から農地に投資していたが、業界推計では、3兆ドル(約370兆円)規模の米国市場で機関投資家全体の保有割合は2%にすぎない。英調査会社プレキンによると、過去5年の間に40以上のファンドが米農地への投資資金として87億ドルを調達した。

一般投資家は農業用不動産投資信託(REIT)を手掛けるグラッドストーンランドやファームランドパートナーズなどの株式を買える。銘柄名「LAND」で取引されている前者の株価はこの1年で2倍に上がり、後者も21%上昇した。

地価上昇率が農地の収益力を上回るケースも

地価上昇で農地をめぐる争奪戦は激しくなっている。投資家は魅力のある土地を見つけにくい。農地投資のプラットフォーム「ファームトゥギャザー」を設立したアーテム・ミリンチャック氏は「われわれは今、多くの高値の農地から手を引いている」と話す。

TIAAの運用部門ヌビーン・ナチュラル・キャピタルの担当者は、土地の値上がり率が農地の収益力を上回り、近年は投資利回りが低下するケースもあると説明する。

それでも値上がり益を含めた総収益率は高く、グラッドストーンやTIAA、米保険大手プルデンシャルといった投資家の保有資産を対象にした全米不動産投資受託者協会(NCREIF)の農地指数でみると、21年の耕作地の年間収益率は11.1%だった。

米農務省によると、農地の7割が今後20年以内に所有者が変わる見通し。高齢の農業者が引退していくなかで機関投資家による農地の保有が増えそうだ。

イリノイ州中部で大豆とトウモロコシを栽培する農家の4代目ジョン・ロビンソンさんは、投資家の関与が増えるのは有益かもしれないとみている。

「1エーカー(約0.4ヘクタール)2万ドルの農地など私は買わないよ。とんでもないことだ」とロビンソンさんは言う。「この2年で土地の値段が跳ね上がった。買いたいという投資家がいれば申し分ない。彼らにリスクを取ってもらおう」