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「稼げるゲーム」貧困を救う NFTで社会課題を解決

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB00002_U2A400C2000000

 

P2E――。「プレー・トゥー・アーン(遊んで稼ぐ)」の略語で、IT(情報技術)業界などでバズワードとなっている。ゲーム内でNFTを増やし、売却して現金化することを意味する。プレーヤーは世界中で増えている。

このP2Eが貧困対策として注目され始めている。きっかけとなったのがベトナム発のゲーム「アクシー・インフィニティー」で始まった「スカラシップ制度」だ。ゲームへの参加には高額なNFTを購入する必要があるが、NFTを多く持つ「富裕層」が新規のプレーヤーに貸し出すことで幅広い人が参加できるようになる。新型コロナウイルスの感染拡大で仕事を失った若者をひき付け、特にフィリピンでは稼いだNFTを生活費や教育費に充てるケースが相次ぎ報告されている。

日本発のスタートアップでブロックチェーンゲームを展開するDEA(シンガポール)もスカラシップ制度を始めた。日本国内ではシングルマザーを対象にゲームを通じて生活費を得られるようにする活動も始める。スカラシップ制度は「運営費確保に悩むスポーツチームの資金調達手段としても注目されるようになった」と吉田直人最高経営責任者(CEO)は語る。

マネーが集まるNFTはバブルの象徴とみなされてきた。流れ込む資金の元をたどると先進国の中央銀行による金融緩和策に行き着く。米欧で引き締めが加速すればマネーの蛇口は閉められてしまう。仮想通貨を巡り繰り返し議論されてきたこの問題はブロックチェーンゲームの世界にもあてはまる。

だがSDGs(持続可能な開発目標)の投資マネーが入り込めば見方が変わる余地はある。経済的に困難な人たちがゲームで稼ぎを得られれば、貧困問題の改善につながる。気候変動問題より早く、わかりやすい形で成果が出てくるだけに、運用リターン向上と社会課題の解決を目指す「インパクト投資」などを通じ、世界のSDGsを志向する機関投資家が目を向けてもおかしくない。

課題もある。アクシー・インフィニティーを開発したスカイ・メービスでは3月下旬、ハッキングにより6億2500万ドル(約760億円)以上の被害が発生した。社会の公器を担うのであれば安全性は欠かせない。ゲームという、これまでインパクト投資と縁がないように見えた産業が本格的に飛躍し、社会を変えるか。転換点に立っている。