トップに求められること 三井不動産社長 菰田正信

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59673890U2A400C2MM0000

 

組織のトップに求められることとは何か。もちろんその答えは一つではないだろうが、私は「人を動かす力」ではないかと思う。

トップは、自分自身でできることはたかが知れているので、どうやって人を動かすか、それを組織としてどう動かすかということを考えなければならない。その時に重要なのが人々に夢を与えるということだ。パーパスだとかビジョンだとか、時代によって表現は違うが、意図するところはこのようなことではないか。

人々に夢を与えるには、その組織の目指す方向を明確に示し、その先に何があるのかを語る必要がある。組織が危機に直面した時は尚更(なおさら)それが大事だ。危機を正面から直視し、痛みに耐えてそれを乗り越えていかなければならない。自分たちが苦しい思いをして痛みに耐える、その先に何が得られるのかを示さなければならない。

2つ目は、自分の描いたビジョンに人を巻き込んでいく力だ。そのためには自分の描いたビジョンの中で自分自身が担うべきことをやって見せ、なるほどと思わせることが必要だ。あとはこの人についていこうと思わせる全人格的な魅力ではなかろうか。

そして3つ目は、人の良いところを見いだす力だ。誰にでも長所や強みがある。しかし、そのポテンシャルを活(い)かしきれていないことが多い。部下の長所や強みを見いだし、それを高めるチャンスを与え、そして強みを最大限発揮できるところに配置する。それによってはじめてトップは自分の描いたビジョンを実現できるのだと思う。