信頼革命に宿る「神の目」 正直は最善の商略なり

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH303XW0Q2A330C2000000

不祥事が最近あればなおさらだ。それでなくても経済活動に欠かせない最低限の約束事をこれから社会人生活を送る新人は神妙に聞き、心を新たにしたはずだ。

だが残念ながら清らかな決意は組織の風土がそうさせるのか、いつしか脇へ追いやられることがある。利己心が頭をもたげた粉飾決算や、検査データ、表示の改ざんなどに手を染める。不正が何十年も引き継がれることもある。企業と社会の間にある情報格差、非対称性をいいことに不正は隠蔽、歪(ゆが)んだ組織防衛により葬り去られた。

産業革命、流通革命の時代は、情報格差のおかげで生き延びることができたのかもしれないが、社会変革も巻き起こすデジタル社会では、不祥事を隠し通すことは難しくなった。

デジタル化は社会の透明性を格段に高めた。市井の人は企業の不誠実な振る舞いや不正の存在を知ると、自由に発信できるネットを武器に撲滅を目指す。公益通報制度もある。デジタルは不正の足跡も残してくれる。対応を誤れば瞬時に消え去るのが信頼と信用。企業生命すら危うくなる。

そんな時代を一言で表現するなら信頼革命ではないだろうか。フラットで透明性のある社会では今まで以上に信頼、信用を守る厳しい規律が求められる。2つの言葉は数値化するのが難しく、主観的な感情から成り立つ繊細なものでもある。だからこそ守ろうとするエネルギーが製品やサービスを磨き上げ、企業価値を持続的に高めてくれる。