https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59659290S2A400C2EA1000/
4月から高校生が家庭科の授業で、預貯金や株式・債券、投資信託といった様々な金融商品の特性と仕組みを学ぶ。小手先ではない深い「お金」の知識を得る機会となるよう期待したい。
高校で本格的な金融教育が始まる背景には、社会の高齢化がある。一人ひとりの個人が長期の視点に立ち、資産を形成する必要性が高まっているからだ。
4月から成人年齢が18歳に下がり、若年層が金融取引のトラブルに巻き込まれる懸念も強まっている。その面でも若いうちから金融を学ぶ意義は大きい。
全国18歳以上を対象にした金融広報中央委員会の2019年の調べでは、学校で金融教育を受けたとする回答は7.2%にとどまった。必要なのは、早くから人生を自ら展望して資金計画を立てられるようにする教育だ。教育関係者と金融機関は密に協力して学びの環境を整えてほしい。
新しく使われる教科書は、住宅や教育費にどれほどのお金が必要で、老後の生活費をいかに見積もり用立てるかなどについて、説明に工夫を凝らすものが少なくない。残る課題はそれを教師が授業でどう使いこなすかだ。
教師は金融に詳しい人ばかりではない。難解な専門用語などについて不安をもらす声も多い。銀行や証券会社、保険会社が学校に講師を派遣するのは有効だろう。もちろん特定の金融商品への誘導は厳禁だ。金融庁や日銀、文部科学省が授業の成功事例を収集し公表する手も考えられる。
高利回りをうたう金融商品の詐欺事件などが起きるたびに、私たちは自己の知識の足りなさを痛感する。老後の不安がひんぱんに話題になる折、中身のはっきりしない投資商品が魅力的に映ることは、だれにもありうる。
金融商品・市場に関する理解不足は若者だけでなく、すべての日本人の問題だ。高校での本格的な金融教育の始まりを、中高年が「お金」についてしっかり学び直すきっかけにもしたい。
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