https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59662400T00C22A4EA5000/
人手不足に悩む建設会社の事業環境に加えて、公共工事入札で4月から賃上げ企業が優遇される政策の影響が大きい。ただ、建設会社の賃上げを民間工事の受注価格に転嫁できるかは不透明だ。
価格のほか技術提案なども評価する公共工事の「総合評価落札方式」で4月以降、大企業で3%以上、中小企業で1.5%以上の賃上げを表明した業者は5~10%程度加点される。これは「技術的な優位性では覆せない」(大手ゼネコン)ほどの優遇だという。
大手ゼネコンでは鹿島、大成建設、大林組、清水建設がすでに優遇対象となる賃上げを表明し、竹中工務店でも検討を進める。準大手の前田建設工業や、沖縄県の国場組、北海道の岩田地崎建設といった地方ゼネコン、道路舗装のNIPPOや一部の建設コンサルタントなども賃上げの方針を明らかにした。
厚生労働省の調査によると日本の建設業の男性労働者の21年の年収は20年比横ばいの558万円だった。建設業の就業者数は20年度時点で492万人。この20年で2割以上も減り、技能労働者は高齢化が進んでいる。人手を確保するためにも3%賃上げの効果は大きい。
建設業では24年4月から残業時間の上限規制が厳しくなり、長時間労働が難しくなる。「労働時間を減らして手取りが減れば現場の士気に関わる」(大成建設の桜井滋之副社長)との危機感も建設各社にはある。
もっとも課題も多い。ゼネコンで組織する日本建設業連合会(日建連)によると、加盟企業の受注額のうち官公庁工事は4分の1にすぎない。鉄骨や鉄筋など建設資材が軒並み高騰しているなかで、建設会社の賃上げによる人件費コスト増を民間部門の工事価格に上乗せできるかは微妙だ。下請け企業の技能労働者の賃金への波及も焦点になる。
建設会社は賃上げは進めても売り上げが上向かなければ経営が厳しくなる可能性もある。ゼネコン各社は建設ロボットの導入など生産性を向上しつつ、受注単価を上向かせる取り組みも欠かせない。
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