https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC281JM0Y2A320C2000000
東京五輪・パラリンピックで選手村として利用された「HARUMI FLAG(ハルミフラッグ)」の分譲マンションが、販売再開後に人気を集めている。交通の便の悪さなど否定的な意見も多かったハルミフラッグの何が、購入者を引き付けるのか。
2021年11月に販売を始めた街区「SUN VILLAGE(サンビレッジ)」第1期と「SEA VILLAGE(シービレッジ)」第2期は、供給した631戸全てに申し込みがあった。21年の販売戸数は首都圏最多で、登録申込数は5546組。平均倍率は約8.7倍に跳ね上がった。この人気の高さは売り主にとっても「想定以上だった」(三井不動産レジデンシャル)という。
22年3月26日には「SUN VILLAGE」第1期2次と「PARK VILLAGE(パークビレッジ)」第2期の販売が始まった。登録受け付けは4月10日まで。応募多数の場合、4月11日に抽選を行う。
1月14日から始まっていた今回のパビリオン(モデルルーム)見学会は盛況だった。販売街区などに違いはあるものの、21年11月と同等あるいはそれ以上の登録申し込みを集めてハルミフラッグ人気が加速するのか注目される。
東京五輪の開催が1年延期になった影響を全く感じさせない引き合いの強さは、どこから来るのか。三井不動産レジデンシャル東京オリンピック・パラリンピック選手村事業部推進室の中塚純太主事は、「新型コロナウイルス禍で住まいに対するニーズがガラッと変わったようだ」と話す。
家で子どもと一緒に過ごす時間が増え、会社はテレワークが当たり前になった。そうなると、「部屋の広さを切実に求める人が増えた」(中塚主事)。実際、部屋が広い物件の倍率が高い。
ハルミフラッグの分譲マンションはもともと、周辺のマンションと比べて同じ価格帯では部屋が広めの設計になっている。都心6区の平均専有面積より、20平方メートル以上広いプランが売りである。
3月26日の販売物件でいえば、例えばPARK VILLAGE6階にある「6F86Cタイプ」は間取りが3LDK+WIC(ウオークインクローゼット)で、専有面積は86.85平方メートル。価格は7400万円台だ。面積と価格だけでいえば、周辺の分譲マンションよりお得感がある。
ただし、ハルミフラッグのマンション群は最寄り駅まで徒歩20分前後かかる遠さがネックだと指摘されてきた。それがコロナ禍で社会環境が大きく変化したため、パビリオン見学会に訪れた人に話を聞くと、「駅までの距離より住環境そのものを重視したい。駅まで多少遠くても、家にいる時間が長くなったので気にならない」と話す人が増えたという。
駅近の物件も引き続き、人気である。三井不動産レジデンシャルが販売しているハルミフラッグに近い都営地下鉄大江戸線勝どき駅直結のタワーマンションは、販売が好調である。ハルミフラッグと近距離で、両方とも売れている。
室内をつくり直して「新築」に
2月末に記者がパビリオンを訪問した際は、乳幼児を連れた若い夫婦の姿が目に付いた。実際、購入層の主力は30~40代の子育て世代である。板状棟が完成し、24年春に入居が始まると同時か、その数年後に、子どもが小学校に通う年齢になる家族が多そうである。
板状棟は東京五輪の開催延期で、躯体(くたい)が当初の計画よりも1年古くなった状態だ。それが1月からの再整備で「新築」になる。
再整備すること自体は、予定通りである。室内は選手村として利用したときの壁などは一部解体し、分譲マンションの間取りに変わる。床や壁、天井など選手が触れることができた内装は原則、全てつくり直す。
選手村マンションは東京五輪時に、「工事の途中段階で一時利用した」という位置付けになっている。あと2年かけて、板状棟は「新築」として完成する。
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