住宅ローンの固定型と変動型 金利上昇、リスクに違い

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Q 住宅ローンの金利が上がったと聞きました。

A 住宅ローンには主に3つの種類があります。完済するまで金利が一定の全期間固定型、当初の一定期間は金利が一定で、その後に金利タイプを選ぶ固定期間選択型、半年ごとに金利を見直す変動型です。主に2月以降、金利が上昇しているのは全期間固定や固定期間選択で期間が10年といった長い期間金利が一定のものです。

Q なぜですか。

A 住宅ローンの金利は各金融機関が市場の金利などを参考に決めます。固定型の金利は債券市場の国債利回りなどが手掛かりで、足元で長期の国債の利回りが上昇したことを反映しました。大手銀の全期間固定の最優遇の適用金利は年1.2~1.8%ほどです。

Q 変動型はどうですか。

A 金利は上がっていません。大手銀など多くの銀行の変動型は短期プライムレート(短プラ)と呼ばれる金利に1%を上乗せした水準を基準金利としています。短プラは銀行が優良企業に1年未満の期間で貸し出す際の金利です。通常は日銀の金融政策の影響を受けます。2009年以降、短プラは年1.475%で変わっていません。銀行間の競争激化により基準金利からの引き下げ幅が拡大し、変動型の適用金利は年0.5%を下回ることもあります。

Q 固定型はなぜ市場の金利を参考にするのですか。

A 金融機関は預金などで集めたお金を企業や個人に融資します。基本的に預金者などに支払う金利と融資先に貸し出す金利の差が利益になります。金利は経済情勢などで変化します。金融機関が住宅ローン金利を低く設定しすぎると損をします。そこで手掛かりとして市場の金利を使うのです。

Q 固定型と変動型で手掛かりが違う理由は。

A 住宅ローンは35年といった長期間の取引です。そのため返済期間中に金利が大きく変動するリスクが問題になります。全期間固定の場合、将来、金利が上昇しても債務者の返済額は変わりません。一方で一般的に金融機関は預金者に払う利息が増え、利益を減らす可能性があります。そこで市場で決まる国債の金利などを住宅ローン金利の参考にします。市場では投資家がその時々の経済情勢から将来を予測して債券などを売買するため、通常、市場の金利水準は将来予測といえるからです。

Q 変動型の場合は。

A 金利を半年ごとに見直すので、短プラが上がれば住宅ローン金利も上がると考えられ、債務者の返済額は増えます。金融機関から見ると預金者に払う利息も債務者からの利子も増えるので、損益に大きく影響しません。固定型は金利上昇リスクを銀行が負い、変動型は債務者が負うといえます。

Q 固定型と変動型のどちらの利用が多いのですか。

A 住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査」によると、最も多いのが変動型で、2021年10月調査では67%が利用しています。約5年前の同じ調査では49%で上昇傾向にあります。金利が低いため変動型を選ぶ人が多いようです。ファイナンシャルプランナー(FP)の竹国弘城氏は「日銀の金融政策が変わらなければ、すぐに変動型の金利が上がる可能性は低い」と話します。

Q 金利が低いのは魅力です。

A 変動型は金利上昇時に繰り上げ返済などができるような「家計に余裕がある場合の選択肢」(FPの井上光章氏)といわれます。全期間固定型はローンを組んだ時点で返済額が確定するので、返済計画が立てやすく、金利の動向を心配する必要はありません。固定型の金利が高いのは、将来の金利上昇リスクを避ける「保険料」とも考えられます。