メタバース狂騒曲3 仮想空間は建設ラッシュ

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このビルは土地の所有者から「日本文化を発信する拠点をつくりたい」との依頼を受けて1か月程度で竣工した。「仮想空間は建設ラッシュだ。このビルを訪れた人から別の建築依頼が舞い込んできた」と話す。

メタバース上の土地の取引は急増している。ゲーム「ザ・サンドボックス」内の土地などの累計取引額は、3月28日時点で4.5億ドル(約556億円)を超えた。仮想空間の取引を可能にしたのが非代替性トークン(NFT)技術だ。デジタル資産は無数にコピーできるため、これまで価値がつきにくかった。NFTで本物と証明して流通させることで、仮想の土地が唯一無二の無形資産となった。

エイベックス・テクノロジーズ(東京・港)は3月1日、仮想空間に拠点を設けた。イベントを開き、世界のファンが集まる構想を描く。社長の岩永朝陽は「仮想空間に出店するのは、米国や中国に市場を広げることと同じだ」と話す。

「毎月1000元(約1万9000円)稼げます」「30日で何十倍のリターン」。中国のインターネット掲示板でメタバースを意味する「元宇宙」で検索すると、もうけ話が次々と出てくる。仮想の土地は暗号資産のように投機目的となり、価格が一時何百倍に跳ね上がった。英国の金融教育機関は「登記など法的な仕組みがなく、偽の取引で価格をつり上げる行為も起きている」と警鐘を鳴らす。

インターネットも当初は懐疑的な声が多かったが、今では生活やビジネスのインフラとなった。仮想空間が投機で終わらず真の価値を生むにはどうしたらいいか。ベンチャーキャピタル、スカイランドベンチャーズ(東京・渋谷)最高経営責任者(CEO)の木下慶彦は「単に空間をつくるだけではなく、人が集まるコンテンツの充実が重要だ」と指摘する。