https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2597B0V20C22A3000000
2022年度上期には売却を終え、一連の不正融資問題は区切りとなる。金融庁が発動中の行政処分を解除するかがスルガ再生の試金石となる。
「シェアハウス関連融資債権の譲渡に関するお知らせ」。スルガ銀の25日の発表は、同行がシェアハウスの所有者全員に対して21年8月末を期限に実施した債権の買い取りや元本の一部カットなどの救済策が決着したことを意味する。
スルガ銀の広報担当者は「22年度上期に手続きがずれ込んだ方々の譲渡も終える予定。一定のメドが付いた」と回答した。18年初頭に発覚したスルガ銀の不正融資問題は丸4年経て終結に向かうことになる。
ただし、問題融資を切り離しただけで再生と言えるのか。金融庁が出している行政処分の行方が隠れた論点として残っている。つまり、金融庁が自立経営にお墨付きを与えるかどうかだ。
結論から言えば「落第点」というのが金融庁の本音だ。かぼちゃの馬車向け債権を切り離せたとしても、それだけで行政処分は解除しないという立場だ。水面下で神経戦が続いている理由は2つある。
今後、持続可能なビジネスモデルを構築するための経営管理態勢の抜本的強化」。金融庁は18年10月5日に出した行政処分で改善すべき項目として7つをあげた。
わざわざ「抜本的」という枕ことばを付けたのは、自立再生が難しくスポンサーを探すよう暗に促すメッセージだった。
金融庁が行政処分を解かない1つ目の理由は、まさにこの条件をクリアできなかったことだ。19年10月に、スルガ銀の岡野光喜前会長(当時)ら創業家の株式を家電量販大手のノジマが引き受け、資本・業務提携したが、21年5月、ノジマが解消を申し入れ、「ノジマ銀行構想」は頓挫した。水面下で代わりとなるホワイトナイトを探したものの、いずれも断られた。
「一棟収益ローン」と呼ぶこのローンの残高は1兆円に上る。ローンスターに売却したシェアハウス融資債権は600億円で、わずかに残っているものを含めても1000億円強だ。その10倍に上る巨額融資について、スルガ銀は一つ一つ対応している。シェアハウスのような一括処理を検討しているわけではない。
収益ローンの債務者が立ち上げた弁護団からもプレッシャーを受けている。ロビー活動を展開し、永田町でも隠れた話題を集める。衆人環視のもと、金融庁が処分を解除するには相当の理由が求められる。
22年はスルガ銀にとって再生の正念場を迎える。金融庁が業務改善命令を解除するタイミングがくるのか。不正融資問題が発覚してから4年を経てもなお、視界は晴れない。
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