https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59433370W2A320C2KNTP00
よくみるとおかしな点のある間取り図が次々に登場し、主人公らは図面から起きた事件の真相を想像する。表紙も間取り図だ。
同じく21年出版のミステリー小説「兇人邸の殺人」(今村昌弘著、東京創元社)は廃虚のテーマパークにある奇妙な構造の屋敷が舞台だ。冒頭に詳しい間取り図があり、事件の展開や物語の理解に重要な役割を果たしている。
今村氏は17年に「屍人荘の殺人」でデビューし注目を集めた。今回が第3弾となる間取り図つきの奇妙な屋敷ものはシリーズ累計で100万部を超す人気ぶりだ。
間取り図を娯楽として楽しむトレンドは2003年、慶大生の佐藤和歌子氏が趣味で集めた奇妙な間取り図を「間取りの手帖」(リトルモア)として出版し本格的に火がついた。その後、漫画に登場する家の間取り図を推定した研究書など、さまざまな著者が独自の視点で間取り図を楽しむ本を出版していく。
ミクシィには「間取り図大好き!」というコミュニティーが誕生し、間取り図を映写して盛り上がる「間取り図ナイト」という催しを開いた。広告などの間取り図を見て楽しむ人を指す「マドリスト」の名も広まった。不動産情報をエンターテインメントとして楽しむネットサイト「物件ファン」も登場した。
間取り図を掲げたエンタメ作品の人気も、こうした流れの延長にある。佐藤氏らによれば、細かな間取り図は土地の狭さなどから間取りの工夫を迫られた日本ならではの文化であり、イマジネーションを刺激する点が楽しさだという。隠れたクールジャパンのひとつかもしれない。

コメントをお書きください