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(社説)地価の回復力を見極めたい

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59431180V20C22A3EA1000

 

ただ物価や金利の先行きはロシアのウクライナ侵攻などで不透明だ。地価の回復力を慎重に見極めたい。

1月1日時点の公示地価は2年ぶりに上昇した。今年に入ってからのオミクロン型の感染拡大やウクライナ侵攻の影響は反映していないが、住宅地、商業地とも前年の下落から上昇に転じた。感染が落ち着いた昨年後半の景況感の改善を映したといえよう。

住宅地は三大都市圏と主要な地方都市で回復が目立つ。コロナ下でも上昇を続けていた札幌や福岡は、上昇地点が周辺自治体に広がった。北海道や九州で中心都市に人口が適度に集まるのは、東京への流出を防ぐ観点から望ましい。政策面でも後押しすべきだ。

東京圏の住宅需要は都心、郊外に二極化しつつある。都心のマンション価格は高止まりが続くが、投資を兼ねた若い世代の取得意欲は根強い。一方、在宅勤務の広がりなどで東京近郊の千葉や埼玉も上昇した。二極化が定着すればまちづくりや交通機関のあり方にかかわる。動向を注視したい。

住宅取得熱の高まりは低金利と住宅ローン減税が支えている。日銀の緩和姿勢は当面変わらないとみられるが、資源高に円安も重なり、建築コストの上昇や購買力の低下が懸念材料だ。

商業地の上昇地点は郊外に目立つ。住宅地の近くで買い物する人が多いからだ。インバウンド依存度が高かった大阪は下落が続くが、昨年後半にわずかに上昇したのは明るい兆しだ。

空室率が上昇する東京都心のオフィス街は回復が鈍い。来年から相次ぐオフィスの大量供給が重荷になる可能性もある。

東京の不動産は各国の主要都市に比べ割安にみられ、世界のマネーが流れ込んできた。米欧との金利差やリスク回避の動きが広がれば、地価の回復力にも影響する。