https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59384320V20C22A3PPL000
Q 遺産分割協議とは何ですか。
A 遺産について、何を、誰に、どれくらいずつ分けるのかを相続人が話し合うことです。亡くなった人(被相続人)が遺言を残さず、相続人が複数の場合に必要です。遺言で遺産の分け方を指定していたら、原則として遺言に従います。遺産分割協議をしないと遺産を相続人のものにできなかったり、各相続人が納める相続税額を決められなかったりします。
Q どのような手順になるのですか。
A 遺産分割協議は相続人全員が参加しなければなりません。そのため、まずは相続人を確定します。被相続人の戸籍を生まれてから死亡するまで集めて、相続人を確定させます。被相続人に配偶者がいる場合、通常は配偶者ともう1組が相続人になります。配偶者以外の1組は民法で順位が決まっています。子、親(祖父母)、兄弟姉妹の順です。
Q 他に必要なことは。
A 被相続人の財産を調べ、分割の対象となる遺産を確定させます。親が亡くなった場合は親名義の自宅(土地・建物)、預貯金、株式、投資信託、債券などの有価証券、金など貴金属、自動車などが主な対象です。なお生命保険の死亡保険金は対象財産には含まれません。被相続人の死亡を原因として支払われますが「受取人は保険契約で指定されている」(司法書士の三河尻和夫氏)からです。
Q 遺産の分け方にルールはありますか。
A 相続人全員が合意すれば分け方は自由です。実際には相続人の組み合わせにより決まる法定相続割合を目安にすることが多いようです。被相続人から贈与を受けていた人や被相続人の介護をしていた人については、その分も考慮するのが一般的です。分け方が決まったら、その内容を記した「遺産分割協議書」を作成します。
Q どんな書類ですか。
A 決まった書式はありません。ただ「誰が読んでも同じ受け止め方になるよう、はっきりと書く必要がある」と弁護士の上柳敏郎氏は話します。通常は遺産の全てについて、その相続人が何をどれだけ取得するかを明記します。さらに内容について確認したことを示す、相続人全員の署名と実印による押印が必要です。
Q 注意点はありますか。
A 司法書士の船橋幹男氏は不動産について記載する際に「不動産登記事項証明書(登記簿)の通りにするのが無難」といいます。登記簿には「地番」や「家屋番号」があり、住所だけでは「対象の土地や建物を特定できないことが少なくない」(船橋氏)ためです。預貯金は金融機関・支店名、種類、口座番号、取得金額を書きます。
Q 細かいですね。
A 曖昧な内容はトラブルの原因になるためです。遺産分割協議書は財産を引き継ぐ手続きで使います。情報が不足していると金融機関での名義変更や換金などができないことがあります。
Q 後から財産が見つかった場合はどうなりますか。
A 相続人全員が合意すれば遺産分割協議をやり直します。実際には時間と労力を節約するため協議書に「後日発見された財産は特定の相続人のものにする」といった文言を入れるのが一般的です。
Q 協議はいつまでに終わらせなければならないのですか。
A 相続税の申告・納付期限である、相続を知った日の翌日から10カ月以内が目安になります。相続人による話し合いが複数回に及ぶこともあり、意外と時間はありません。話し合いがまとまらない場合は家庭裁判所の遺産分割調停や遺産分割審判により遺産の分け方を決めることもあります。

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