https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59384230V20C22A3PPN000/
こう話すのはファイナンシャルプランナーの畠中雅子氏。シニア世代で足腰の衰えや要介護状態になることに備えてリフォームを検討する人は多いが、費用がかさむ例があるからだ。生活費や介護費をまず確保し、余裕資金の範囲で考えるべきだという。
国土交通省の調査でリフォーム費用は平均200万円弱となっている。ただし費用が予算を超える場合もあるので注意が必要だ。住宅リフォーム推進協議会(東京・千代田)が2021年に実施した調査によると、50代以上でリフォームをした人の費用は平均約289万円と当初予算の平均の約242万円を50万円近く上回った。
「リフォーム箇所が予定より増えたり、設備を当初よりグレードアップしたりして予算超過になる人が目立つ」(同協議会)。家計への負担増を避けるにはリフォームの計画を慎重に練るだけでなく、税制優遇や助成金など公的制度の活用を考えたい。
まず見逃せないのがリフォーム費用に応じて所得税と固定資産税を減税する制度だ。22日に法案が成立した22年度税制改正で入居などの期限が2年延び、一部の改修工事で利用条件が緩和される。
所得税の減税対象になるリフォーム工事は大まかに5種類ある。それぞれ工事限度額が決まっており、限度額までの工事費用の10%を税額控除する。家の出入り口を広げたり、床の段差をなくしたりするバリアフリー改修は200万円が限度。仮に工事費用が200万円なら20万円を節税できる。
耐震、省エネ、三世代同居の工事は250万円が限度額となっている。ただ省エネで窓の断熱改修に加え太陽光発電設備を設置する場合は100万円が上乗せになる。耐震と省エネのほかに土台の防腐処理など耐久性向上の改修をすると限度額は500万円に、太陽光発電を設置すれば600万円まで上がる。費用が上限を超えた場合は1000万円までは超過分の5%を控除できる。その他の工事も一部控除できる場合がある。
制度の対象になる費用は実際に支払う金額ではなく、国がリフォーム工事の内容ごとに定めた「標準単価」が基準になる。標準単価に工事箇所や施工面積を掛けるなどして計算する。利用者は建築士などに「増改築等工事証明書」を発行してもらう必要がある。
23年12月末までに耐震改修は工事を完了することが条件で、バリアフリー、省エネ、三世代同居、耐久性向上は入居することが必要となる。また耐震は築年数の条件、耐震以外は住宅の床面積が50平方メートル以上という基準もある。
リフォーム資金を銀行などから10年以上のローンで借りる場合は住宅ローン控除の対象になる。借入額2000万円を限度に年末残高の0.7%を10年間、所得税から控除する。所得税から引き切れない場合は翌年度の住民税の納税額が減る。25年末までに入居することなどが条件だ。
固定資産税の優遇では耐震、バリアフリー、省エネの工事は翌年度に納める税額の3分の1~2分の1を減額する。所得税の優遇と合わせて利用できるが、条件が異なる点に注意したい。床面積が耐震工事を除き50平方メートル以上280平方メートル以下で、24年3月末までに工事が完了する必要がある。耐震改修の築年数などの条件も異なる。また所得税は翌年に確定申告が必要だが、固定資産税は工事完了から3カ月以内に市区町村に減額申告をする。
22年度税制改正で所得税の省エネ改修が利用しやすくなることも知っておこう。これまでは断熱工事で窓を二重サッシにする場合、全ての居室の全ての窓を交換する必要があったが、今後は一部の窓を交換すれば減税対象になる。
税優遇以外に国や自治体が費用を助成する制度も見逃せない。3月28日から申請受け付けが始まるのが国の「こどもみらい住宅支援事業」。リフォームでは年齢や家族構成を問わず利用できる。断熱改修や高効率給湯器設置に加えバリアフリーや耐震などの工事で一定の条件を満たせば最大30万円の補助を受けられる。工事内容に応じて補助額の単価が決まっており、補助額が5万円以上の工事が対象だ。工事金額では一般に50万円程度以上になるとみられる。
こうしたリフォーム費用はシニア世代が自分で賄うのが基本だが、税理士の大塚英司氏は「子どもが親の家の改修費を負担する場合は親に贈与税がかかる可能性があることに注意が必要」と指摘している。

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