https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB185090Y2A310C2000000
2022年の東京圏の公示地価は全体で前年比0.8%上がった。伸びは全国平均(0.6%)を上回る。21年に東京23区の人口が初めて転出超過となる流れに逆らうように地価を支えたのは海外マネーの流入だ。
不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)によると、21年の日本の不動産購入額に占める海外投資家の割合は24%と前年比10ポイント低下した。実際は「外資に声がかかるオープンな入札が少ないだけで、海外勢の投資意欲は衰えていない」(金子氏)。
外資は新型コロナウイルス禍で打撃を受けた企業の資産売却に狙いを定める。西武ホールディングスはホテルなど31施設をシンガポール政府系ファンドのGICに売却する。17日には米ファンドKKRが三菱商事などの保有する不動産運用会社の買収を発表した。
「日本買い」に拍車をかけるのは内外の金融政策の差だ。高インフレの沈静化へ利上げに踏み切った米連邦準備理事会(FRB)に対し、日銀は緩和姿勢を崩していない。日本は不動産購入資金を相対的に低コストで調達しやすい環境が続くとの見方がもっぱらだ。
足元で東京の主要オフィスビルには明白な投資妙味がある。ドイチェ・アセット・マネジメントによると、年間賃料収入を取得価格で割った投資利回りと長期金利の差は21年末時点で3.2%。ロンドンの2.9%を上回っている。不動産価格の上昇で表面上の投資利回りが低下しても、海外より利ざやが大きいことは変わらない。
三菱UFJ信託銀行の1月の調査では、国内外約30人の不動産ファンド運用担当者の35%が都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス価格が今年上昇すると答えた。下落の回答は1割に満たなかった。
為替市場では金利差の拡大などを背景に円安に歯止めがかからない。ドルなど外貨建てで見れば日本の不動産の取得価格はより低下する。「足元の賃料下落などを織り込んでもなお強気の値段で取引されている」(三菱UFJ信託銀の大溝日出夫・不動産コンサルティング部フェロー)という。
活況がいつまで続くかは見通せない。あふれる緩和マネーを吸い寄せる核だった東京都心3区(千代田、中央、港)の商業地の公示地価は2年連続で下落し、変調の兆しを見せる。
東京は23年にオフィスビルの大量供給を控える。「安いニッポン」の投資妙味のバランスはいつ崩れるともしれない。
コメントをお書きください