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住宅需要、郊外に拡大 テレワーク浸透映す コロナ下の地価回復㊤

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA221YY0S2A320C2000000

 

札幌市の2021年の新築マンション平均価格は5026万円で前年より3割近く跳ね上がった。相対的に安い近隣の物件に消費者の視線が向いた。新型コロナウイルス禍でテレワークが浸透したのも要因とみられる。

 

北広島市は住宅地と商業地ともに上昇率が全国1位。札幌駅までJR線で20分前後というアクセスの良さから人気が沸騰する。23年に開業するプロ野球日本ハムの新拠点整備も追い風だ。北海道不動産鑑定士協会の斎藤武也副会長は「価格上昇を見込んで売りを手控える土地所有者もいる」と明かす。

JR宇都宮駅周辺で公共施設などの整備が進み宇都宮市は住宅地、商業地ともに上昇した。23年春に開通する次世代型路面電車(LRT)は旧来の繁華街とは逆側の駅東部を走る。不動産鑑定士の永井正義氏は「住み心地のよい場所に住宅を購入する動きが増えている」と話す。コロナ禍で在宅時間が増えていることが背景にある。

住宅地は東京都も堅調だった。1.0%のプラスで上昇幅は全国平均の0.5%を上回った。「おしゃれなお店が多いし交通の利便性も高い」。21年夏に目黒区の新築マンションに夫婦で入居した女性会社員は満足そうに話す。共働きの「パワーカップル」にとっても想定を超える8000万円台の高値に思案しつつ「まだマンション相場は上がる」と購入に踏み切った。

地価と連動した住宅価格の高騰は鮮明だ。不動産経済研究所によると21年の東京23区の新築マンションの平均価格は8293万円と前年比7.5%伸びた。

全国と同様に都心の宅地価格の上昇は周辺に波及している。東京郊外に位置する稲城市は2.3%のプラスで、14年から9年連続で上がった。土地区画整理によるインフラ整備が子育て世帯などに評価される。近隣の埼玉、千葉、神奈川の3県もそろって上昇した。

観光地や繁華街もコロナ禍で需要が急減した影響が和らぎつつある。国内観光客に人気の高い浅草駅周辺は前年の12%下落から1.1%プラスに浮上。京都の祇園地区も8.6%マイナスから横ばいまで戻した。

なお地域差は残る。大阪・道頓堀は15.5%下がり、全国の商業地で最も下落率が大きかった。マイナス幅は前年(28%)に続いて2桁になった。都市未来総合研究所の平山重雄氏は「訪日客需要に対する依存度が大きかった場所ほどコロナ後の需要蒸発の影響が残っている」と指摘する。