https://www.nikkei.com/article/DGXZQOMH166ZT0W2A310C2000000
ペナルティーなく契約解除
個人の住まいの売買の場合、買い主は一般の消費者となることから、万が一、住宅ローンの審査が通らなかったときは、買い主がノーペナルティーで契約解除できるという特約が付いているのが一般的です。これが住宅ローン特約と呼ばれています。
一般的に契約書には以下のように、融資の申し込みをする金融機関名、融資金額、融資承認を取得する期限が明記され、その期限までに融資金額のすべてまたは一部が借りられない場合には、明記された契約解除期日までであれば無償で解除でき、売り主は、受領済みの金員(一般的には手付金)を無利息ですみやかに買い主に返還しなければならないという内容になっています。
トラブルに発展することも
このような住宅ローン特約ですが、申込先が空欄のままである、または単に「金融機関」としか記載されていないケースが散見されます。気に入った住まいが見つかると購入の申し込みをし、1週間もしないうちに不動産売買契約を結ぶことが多いことから、融資の申し込みをする金融機関を決められないというのも理由の一つのようですが、実はとても危険なことなのです。
融資の申し込みをする金融機関名が書かれていない、あるいは単に「金融機関」としか記載されていないということは、例えば、買い主が希望する金融機関の住宅ローン審査が通らなかったとしても、まだ別の金融機関などで審査が通る可能性があるので契約解除はできないと解釈することができるからです。「金融機関」ですから一般的な銀行などでなくてもよいと読め、通常より高い金利水準で審査が通る可能性があるなら、売買契約を無償で解除することはできないと主張される可能性があるのです。
実際に、申込先を「金融機関」や「都市銀行等」と記載し、いくつかの銀行の審査が通らなかった事案で、買い主が住宅ローン特約を使って解除したいと申し出たところ、仲介会社から解除はできないと言われトラブルに発展したケースがあります。仲介会社は、ローン審査が通らず、この契約が解除になってしまうと、仲介手数料をもらうことができなくなる場合があるため、何としてもローンを通そうとする動機が働く場合があり、申込先を明確にしないままとしているところもありますので、十分に注意する必要があります。
あいまいな点がないか確認
不動産売買契約を結ぶ前に、仲介会社は買い主に対して重要事項説明書を発行し説明をしなければならないことになっています。ここでも住宅ローン特約について説明がなされますが、重要事項説明書では申込先や融資金額、金利、返済期間、返済方法(元利均等返済か元本均等返済か)、ローン事務手数料等について明記するようになっています。いずれの項目もあいまいな点がなく記載されていることを確認するとともに、ここで記載された条件でローン審査が通らなかった場合の措置について、しっかり確認しておくとよいでしょう。
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