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ウクライナ難民施設に間仕切り 行動する建築家・坂茂氏

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC171P70X10C22A3000000

 

準備は2月末から始まっていた。「テレビで難民の受け入れ施設が映ると、人々が雑魚寝している状況だった。プライバシー確保だけでなく感染症対策の観点でも、紙管ユニット(ペーパー・パーティション・システム、PPS)の必要性を感じ、すぐに支援しようと思った」と坂氏は言う。

PPSとは坂氏が考案した、紙管の間仕切りシステムだ。これまで東日本大震災や熊本地震、九州を襲った「令和2年7月豪雨」の避難所などで数多く提供されてきた。

今回の支援ではまず、ポーランドの建築家ヒューバート・トラマー氏たちと共にチームを立ち上げた。坂氏とは、欧州委員会が創設したプロジェクト「新欧州バウハウス」で共に委員を務めていた間柄だ。その他、坂氏の元教え子であるイエジ・ラトカ氏がポーランドのブロツワフ工科大学で教壇に立っていたこともあり、同大学の建築学科生たちがチームに参加した。

「現在、PPSを使ってトンガの噴火・津波、米ケンタッキー州の竜巻、ハイチ地震の被災地でも同時に支援をしている。そうした活動が国内外のメディアに多く取り上げられ、認知も広がってきたため、今回のウクライナ難民支援でも話がスムーズに進んだ。チームも思っていたよりすぐに発足できた」(坂氏)

紙管はポーランドの工場で製造されたものを提供してもらった。PPSは1ユニットの大きさが2.3×3メートル、梁(はり)までの高さが約2メートルだ。現地の折り畳みベッドが大きかったため、日本で使用したときよりも梁の長さを20センチメートル長くした。

紙管同士の組み立て方などは、基本的に過去のPPSと変わらない。坂氏がポーランド入りするまでに、ラトカ氏やその学生たちが先にプロトタイプをつくり、確認した。