https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59253470Z10C22A3EA2000/
円相場と日本株の値動きの連動性を示す相関係数が急低下している背景には、資源高と円安が重なって日本の輸入物価を一段と押し上げ、企業のコスト増につながるとの懸念がある。
従来、外国為替市場で円安になると、日本企業の輸出が増えて業績が改善するとの期待から日本株が買われる関係にあった。
2012年11月に当時の野田佳彦首相が衆院の解散を表明し、アベノミクスによる金融緩和観測が高まった局面が典型例だ。約3週間で円はドルに対して約3円下落。この間、日経平均は8600円台から9500円台に約1割上昇した。だが、今回は日本株を買う動きが限られる。
円安でも日本株が買われないのは、現在の円安が日本経済や企業にとって「悪い円安」との見方が台頭しているためだ。ウクライナ情勢の悪化で資源や穀物の供給が細るとの懸念から、原油先物価格は一時、13年8カ月ぶりの高値となる1バレル130ドル台に上昇。非鉄金属や穀物の価格も軒並み上昇した。資源や食料を輸入に頼る日本にとってはコスト高要因になる。
円安は輸入物価の上昇を招く。輸入物価指数はすでに前年比で3~4割上昇しており、足元の円安を踏まえれば一段と上昇するとの見方がある。
中長期で見ても円安の業績押し上げ効果は弱まっている。ニッセイアセットマネジメントの松波俊哉チーフ・アナリストは「企業が海外移転を進めてきた影響が出ており、円安で輸出が増えることもなくなった。グローバル企業にとってまだ円安は多少追い風だがもうほぼ変わらない」と話す。
資源高に直面するいまは日本の経済構造の弱さが課題視され、円安でも買いが入りにくい。日本企業の「真水」の競争力を高めなければ、株価の持続的な上昇が見込めなくなっている。
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