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老いる社長、日本企業の平均60.3歳 31年連続で上昇 企業信用調査マンの目

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC14CI30U2A310C2000000

 

信用調査会社、帝国データバンクで企業の経営破綻を専門にする第一線の調査マンが破綻の実例などをケーススタディーにし、中堅中小の「生き残る経営」を考察します。

 

過半が60歳以上

21年の平均年齢は前年比で0.2歳上昇した。帝国データバンクが調査を開始した1990年からの31年間で、日本の社長は平均で6.3歳老いたことになる。社長の年代別構成比をみると、最多は50代(27.6%)で、60代(26.9%)、70代(20.2%)が続き、60歳以上が全体の51.8%を占めた。一方、少なかったのは30代未満(0.2%)、30代(3.2%)で40歳未満は全体のわずか3.4%となった。

 

社長が高齢であるほど、必然的に死亡や健康上のリスクは高まり、後継者の有無はステークホルダー(利害関係者)にとって信用判断の大きな材料となる。なかでも後継者不在の小規模事業者における社長の死去や引退は、情勢が急変するきっかけになりうる。過去の取材でもそうした経緯で破綻に追い込まれた事業者は多い。

よく目にしたのは、社長の死去によって簿外債務が発覚したり、社長の人脈頼みで事業を展開してきたことで取引先との関係がうまくいかなくなったりするパターンだ。いずれも創業時から資金管理や取引先の選別を社長単独で行ってきた内情があり、「ワンマン経営」の要素が大きいという共通点がある。

継続困難避けられず

業種別(大分類)に社長の平均年齢をみると、最も高かったのは不動産業(62.4歳)で低かったのはサービス業(58.8歳)となった。不動産業は土地やビルを所有する不動産賃貸業の社長(資産家)が相続(親子間引き継ぎ)と関連して長年代表を務めるケースなどがあり、平均年齢を押し上げる要因になっている。一方、サービス業はIT関連企業を立ち上げる若い経営者の増加などが平均年齢低下の要因になっていそうだ。

さらに細かい業種(小分類)でみると、サービス業に含まれる病院やクリニックの状況が深刻だ。代表の年齢が60歳以上の病院は全体の80.4%、クリニックは82.5%に上ることがわかった。病院は組織が大きく後継者(候補)が常に存在するケースが多いが、クリニックは創業者が代替わりすることなく長年にわたり代表を務め、事業承継せずに廃業させようとしているケースが多い。

日本のクリニック施設は約10万4500で、コンビニエンスストア(約5万7000軒)の2倍近くもある。高齢化に伴うクリニックの廃業が加速すれば、テナント入居しているビルや近隣の調剤薬局への影響も出てくるはずだ。