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超金融緩和とは、何だったのか(澤上篤人) 「ゴキゲン長期投資」のススメ さわかみ投信創業者

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB107750Q2A310C2000000

 

誰のための超金融緩和か

先進国経済は一体どんな成果を収めてきたのだろうか? あちこちで報道されているように、一部の富裕層の金融所得は著増している。一方、国民全体の低所得化がどんどん進んでいる。なかんずく、中産階層といわれる人々の没落が著しい。それが先進国の消費を減退させ、成長率がなかなか高まらない要因となっている。

 

では、一体何のため、誰のための超金融緩和と大量の資金供給政策だったのか? ゼロ金利で資金をいくらでも調達できることは、民間ビジネスにとっては願ってもない事業環境である。ならば、民間ビジネスが活発となり、経済成長率も大いに高まっているはず。

現実は全くの期待外れとなっている。唯一とも言っていい成果(?)は、債券や株式、不動産市場が大活況になっていることぐらいだ。要するに、金融や不動産のバブルを膨らませてきただけなのか? そう言うしかないだろう。

金利がなければ、経済は動かない

お金の出し手も、その対価、つまり金利がゼロ同然では「アホらしい。もっと有利な資金運用先を探そう」となって当たり前だろう。それで、マネーが金融市場や不動産市場に突出していっているのだ。結局、バブルを醸成してしまうだけとなる。

経済合理性の逆襲

経済活動は、全てが需要と供給とのせめぎ合いである。すなわち、大量に供給されたものは価値が下がり、価格も安くなる。これだけマネーが大量に供給されてきたのだから、マネーの価値は間違いなく下がっている。従って、もうずっと早い段階から世界はインフレとなってもおかしくなかった。ところが、マネーは金融市場と不動産市場へ突出していき、経済の現場でインフレを引き起こすには至っていなかった。そうなのだ、有り余ったマネーはバブル化の方へ向かっていたわけだ。

世界のあちこちでコストプッシュ型インフレの足音が聞こえてきた。世界的なサプライチェーンの分断、脱炭素で化石燃料などへの投資不足による原油やLNG(液化天然ガス)高、人の移動制限による賃金上昇圧力、さらには地政学的リスクなどによるコスト上昇要因が迫ってきている。

通常のインフレは、景気が良くて需要が旺盛な時に発生するデマンドプル型といって、価格高騰で需要がしぼんでいくと自然に収まるもの。ところが、コストプッシュ型は供給サイドからの一方通行的な価格上昇圧力であって、案外と長引くもの。

それを見て、有り余っている世界のマネーがインフレ投機に躍りかかっていこう。その場合は、想定もしなかったようなインフレと金利高が襲ってこよう。まさにダブダブにマネーをばらまいてきたことに対する、経済の現場からのしっぺ返しだ。