https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0239L0S2A300C2000000
齢(よわい)91のウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社、バークシャー・ハザウェイだ。
昨年末比での株価騰落率は10日時点で8%高。米S&P500種株価指数(11%安)を大きく上回る。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う金融緩和で相場全体が好調だった2020~21年は市場平均を下回っていた同社株だったが、危機の局面で浮上してきた。
単にバークシャーが鉄道輸送など景気変動に左右されにくい事業を展開するディフェンシブ株の側面を持つからだけではない。バフェット氏が過去、ITバブル崩壊やリーマン・ショックといった危機を乗り越え、リターンを上げ続けてきたという実績も大きい。
銘柄ではなくビジネスを探す
バフェット氏に強い影響を受けたという資産運用会社、スパークス・グループの阿部修平社長は「危機でも揺るがない投資哲学に投資家は信頼を置いている」と話す。哲学とは「優良成長株を本質的価値より安く買う」というものだ。
2月26日にバフェット氏が公開した21年の「株主への手紙」で改めて強調されていたのが、「銘柄を探すのではなく、ビジネスを探す」という原則だ。バフェット氏が求めるのは短期的なリターンではなく、あくまで長期的な成長期待にある。
日本の商社株を買い増し
その兆しは出始めている。21年末のバークシャーの主力銘柄に「新顔」が現れた。三菱商事と三井物産だ。バフェット氏は20年から日本の5大商社に投資しており、さらに持ち高を増やしてきたようだ。バフェット氏の動向に詳しい、独立系ファンドマネジャーの石原順氏は「自社株買いの余力があり、割安な日本の商社株を買い進めている」と話す。
過去の危機では株価が下げたところでバフェット氏は果敢に動いた。例えば、リーマン・ショック直後には「米国株を買っている」と宣言した。著名投資家を分析するベテラン個人投資家のみきまるさん(ハンドルネーム)は「危機時に相場が恐怖に支配されたタイミングを見極めて買う点にこそ、神髄がある」と話す。
ウクライナ危機で原油価格が高騰した3月上旬には、米石油大手、オキシデンタル・ペトロリアムに巨額の投資を行った。19年に同社の優先株を購入していたが、危機の局面で一気に買い増しに動いた格好だ。
タイミングに加えてもう一つ重要なのは、バフェット氏はブランド価値やビジネスモデルの強さといった、安定した収益力につながる企業の「質」を加味して、投資を判断するという点だ。現在同社のポートフォリオの約半分を占め、運用成績を押し上げるアップル株への投資も、こうした観点で決断した。
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