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相続で使う戸籍謄本の「束」 準備の手間を減らす方法

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOMH071IT0X00C22A3000000

 

相続にあたっては、相続人を確定させるため、亡くなった人(被相続人)の戸籍謄本などを集めなければなりません。現在のものだけでなく、出生まで遡る必要があります。

 

通常はまず、被相続人の死亡時の本籍地から死亡の記載のある戸籍謄本または除籍謄本を取得します。戸籍は市町村が管理しており、戸籍謄本は戸籍のある自治体に請求します。

 

ちなみに、実務では被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本を「除籍謄本」と呼ぶ例がありますが、正しい言い方ではありません。戸籍内の者が婚姻や死亡により全員除籍になるとその戸籍は除籍簿に移りますが、その除籍された戸籍簿の全部を証明したものが除籍謄本です。

 

最終の戸籍謄本から遡る

相談者のケースで、たとえば子は婚姻で除籍され、母も死亡しており、今回の父の死亡によりその戸籍内の全員が除籍となっている場合には、戸籍謄本ではなく除籍謄本を取得します。母がまだ健在である場合には父(被相続人)の死亡が記載された戸籍謄本を取得することになります。

 

この最終の戸籍謄本を見て、従前の戸籍を示す「婚姻」「改製」「転籍」などの記載を手掛かりに、1つ前の戸籍のある市町村に古い戸籍謄本を請求することを繰り返し、出生まで遡ります。しかし、戸籍謄本には合併などで消滅した市町村が記載されている例が珍しくありません。その場合には現在、どの市町村が承継して保管しているのかを調べる必要があります。

 

法定相続情報証明制度を活用

2017年5月29日から全国の登記所(法務局)において、各種相続手続きに利用することができる法定相続情報証明制度が始まりました。この制度は、登記所(法務局)に戸除籍謄本などの束を提出し、あわせて相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すれば、登記官がその一覧図に認証文を付した写しが無料で交付されるものです。

一覧図の写しは必要な部数が無料で発行されるため、相続財産が複数ある場合には便利です。また、提出された法定相続情報一覧図は法務局で5年間保存され、その期間内であれば一覧図の写しが再発行できます。ちなみに、この制度創設の背景には所有者の把握が困難な所有者不明土地増加の問題があり、相続登記が未了のまま放置されないようにするための利便性向上の一環でもあるようです。一覧図の書式や記載例は法務省のホームページから取得可能です。

なお、本来、戸籍が電算化された市町村では戸籍謄本ではなく戸籍全部事項証明書と呼ぶのが正しいのですが、本稿では従前の呼称に従い、「戸籍謄本」を用いています。法務省のホームページでも「戸籍謄本」が使われています。