https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58908600Y2A300C2DTA000
新型コロナウイルス禍を機に住宅販売が好調で、減った在庫の埋め戻しが遅れていたが、20年6月末に近い水準に戻った。原材料高が続くなか在庫を確保できるかが今後の収益を左右する。
飯田GHDとオープンハウスグループ、ケイアイスター不動産の棚卸し資産と回転日数を1~6月期と7~12月期の半期ごとに集計した。オープンハウスGは21年1月に連結子会社化したプレサンスコーポレーションの売上高や資産は除いた。
3社合計の棚卸し資産は21年12月末時点で1兆41億円と20年12月末より25%増えた。21年7~12月期の期中平均の棚卸し資産を売上高で割って算出する回転日数は3社平均で148日。直前の21年1~6月期(134日)より11%長く、1年前の20年7~12月期(146日)と比べて2%伸びた。
一般的には回転日数の低下は経営効率の高さを示す。
棚卸し資産の内訳を開示している飯田GHDでは戸建て分譲事業で仕入れた土地などの「仕掛かり在庫」が21年12月時点で同年3月より46%増えた。一方で完成した物件で買い手が付かない「完成在庫」は13%減少した。
住宅市場が好調ななか、建て売りの戸建て住宅はマンションの価格高騰についていけない人々の受け皿でもある。東京都品川区の戸建て住宅を契約した30代男性は「マンションは狭い割に高い」と不満をもらす。
不動産経済研究所(東京・新宿)によると21年の首都圏の新築マンション平均価格は6260万円とバブル期を超えて過去最高だった。対して戸建ての足元の平均価格は飯田GHDだと2864万円。オープンハウスGも4587万円と比較的低い。
各社は販売機会を逃すまいと適正な在庫の積み増しを模索する。飯田GHDは「販売棟数の半数程度の在庫水準が望ましい」(西野弘専務)とするが、原材料の値上げや供給不足が懸念だ。
21年から顕在化した「ウッドショック」の影響で木材の供給は不安定だ。トイレや窓サッシ、給湯器など住宅設備機器も調達遅れや値上げが目立つ。
各社は今のところ住設機器の在庫を多めに確保するが、「この状況が続けば住宅の販売数も絞らざるを得ない」(住宅業界関係者)との声もある。資材や建材不足で着工が鈍れば、適切な住宅在庫を確保できなくなり売り上げも減少する、という望まぬ在庫回転日数の短縮を招く恐れもある。

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