https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB022DB0S2A300C2000000
新型コロナウイルスの発生から2年たった。日本経済はパンデミック宣言当時に予想されたよりは相当安定している。
政府が手厚い給付金や補助金を手配し、銀行に貸出を躊躇させることがないよういわゆる「ゼロゼロ融資」などで間接的に支援した効果は大きかった。結果として銀行セクターも救われた。今期、一部の邦銀は過去最高益を達成する見込みとなっている。
体力に陰りも
しかし足元では、これまで持ちこたえてきた企業や個人の体力に陰りが見えてきている。2020年3月末から21年9月末の1年半で、大手地銀の不良債権は、宿泊や各種サービス業向け等を中心に13%増加、さらに、不良債権予備軍であるその他要注意債権は19%増加した(大手地銀7行の平均)。
まだ不良債権と予備軍の与信全体に対する比率は10%程度に留まるものの、東京商工リサーチが今年2月初旬に行ったアンケート調査では、今後の借入金の返済に懸念があるとする中小企業の割合は20%を超えている。中小企業で今年倒産が増えると考えている人の割合は7割を超える。
また、個人についても、預金残高300万円未満の口座の1口座当りの預金残高が、昨年後半から減少に転じていることは気になるところだ。300万円以上の大口口座の1口座当り残高は引き続き増加しているのと対照的だ。
また、住宅ローン等のコンサルティング会社のデータによれば、住宅ローンの返済に困っている人の相談件数は、コロナ前に比べて1.5~1.6倍になっている(図)。
中小企業改革への期待
従業員一人当たりの付加価値を資本金10億円以上の大規模企業と1千万円以上1億円未満の中小企業で比較すると、過去60年間でいずれも12倍程度に上昇している(直近20年では双方微減)。
つまり、それぞれのクラスターの中ではそれなりに改善が図られている。ただ、1人当り付加価値の金額は大企業の1232万円に対し、中小企業は536万円と差は開いたままだ。今後は機械化投資力の差などで一層差が広がる可能性がある。
確かに日本企業はコロナ禍でも奮闘している。ただその一部は、政府からの手厚いコロナ支援や低金利に守られ"温室育ち"で健康を維持している。原材料費高騰という外気のショックにどこまで耐えられるのか。正念場を迎えている。
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