https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD010T00R00C22A3000000
「過去の多くの紛争で相場下落は一時的で、大きく下げた局面で買えば利益につながりやすかった」。ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏はこう話す。
東海東京調査センターの調べでは旧ソ連のアフガニスタン侵攻(1979年)や湾岸戦争(91年)など70年代以降に起きた16回の主な紛争や戦争で、米国株の発生後短期的な下値までの下落率は約5%。1年後には下値から17%上昇していた(いずれも中央値)。
物価上昇と景気後退に警戒も
もっとも16回のうち、下値から1年後も株価が上向かなかったことが2回あった。73年の第4次中東戦争と2001年の米同時テロ事件だ。いずれも紛争後の時期が景気後退と重なった。
今回はどうか。ロシア軍による原子力発電所砲撃が伝わるなどしたが、井出氏は「当面景気後退が起きる状態ではない。紛争拡大や原発での予想外の被害がない限り、下落が長期で続く展開は考えづらい」とみる。同様の予測は市場の多数派だ。
ただし一部では異なる見方もある。ピクテ投信投資顧問の萩野琢英社長は「物価上昇と景気後退が同時に起きるスタグフレーションへと進むリスクも1~2割ですまない」と話す。新型コロナウイルス禍への対応で通貨が大量供給され、米国ではインフレ率が急上昇。「そこへウクライナ問題が加わり、物価上昇率が想定を上回る懸念が出ている」(萩野氏)。米連邦準備理事会(FRB)の利上げは3月は0.25%となりそうだが、その後加速する可能性もある。
株式、長期でリターン大きく
まず再確認しておきたいのは、株式への投資は長期的にはインフレや景気後退を乗り越えて十分なリターンを確保してきたということだ。長期のデータが残る米国市場での動きを見よう。
米国株(S&P500種株価指数)は1949年末に比べ21年末まで約2800倍に上昇、長期国債(約40倍)を大きく上回る。高い物価上昇率が続いた時期もあったが、物価上昇率を引いた実質的なリターンでみても株式は長期では大幅上昇だ。一方、長期国債は戦後から物価上昇率の高かった70年代末までは実質マイナスだ。
ただし株式の好成績は極端な高インフレの時期は失われることがある。消費意欲の減退や原材料高による企業利益の圧迫などが要因だ。73年の第4次中東戦争後から石油ショック後の81年末までの主要資産の動きをみると、高インフレ期は株価の上昇率が低い。上のグラフの物価変動除く米国株の推移でわかるように、この間に限れば実質マイナスだ。一方で不動産や金は大きく上昇した。
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