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メタバースが描く近未来 コラム「アルファビル」担当記者 ジェマイマ・ケリー

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58666080R00C22A3TCR000/

 

たった299ドルを支払えば、辛い現実から逃れ、空想の世界で幸せに暮らせる。だから、本当の人生が悲惨でも構わない。CMはこのような視点でメタ・クエスト2を売り込んでいる。

同社は、仮想世界で過ごす時間が長ければ長くなるほど、現実世界で使える時間が減っていくことは指摘していない。つまり、メタバースにのめり込めば、働く、眠る、運動する、子供をもうける、さらには技術から離れるなど、仮想世界の中ではない現実の自分のための時間が減るのだ。

メタのメッセージはどうやら、現実の人生が最悪かもしれなくても恐れることはない、代わりに偽の人生を持てるので安心できる、というもののようだ。だとすれば、このCMはとてつもなく暗い未来のみならず、我々の価値観を根本的に覆す、かなり過激な将来像も示している。

 

「未来に生きる」はメタが企業として掲げる新しい価値観の一つだが、動画サイト「ユーチューブ」に投稿された冒頭のCMのコメント欄をみると、ユーザーはまだその心構えができていないかもしれないことを示唆している。

 

「この広告以上に、ヘッドセットを外して外に出たくなる気持ちにさせるものはない」というコメントがあった。

恐らく大半の人はまだ、ザッカーバーグ氏が売り込もうとしている世界に身を委ねる用意はできていない。だが、大きな権力と経営資源、そしてデータを意のままに使えるザッカーバーグ氏が、機は熟しているかもしれないと考えていること自体が不気味だ。