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賃上げは実現するのか

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO80463510V20C22A2MY6000/

 

米国では経営者だけでなく、トップ技術者の年収も1億円を超える。それが可能となるのは、非常に収益力の高い企業が生まれており、その企業が高度専門家の貢献を評価しているからである。米国の有名ビジネススクールでは卒業直後の初任給が年約1700万円なのに対し、日本の大学院修了者の初任給は男女平均で年306万円と、顕著に違うという。日本では賃金所得が米国より平等に分配されており「平等に貧しい」状態である。

 

生産性向上のための政策として、政府による教育訓練や人への投資といった措置が必要なのは言うまでもない。加えて労働市場全体の構造改革にも取り組まなければならないと主張するのは、大阪大学教授の佐々木勝氏(2月18日付経済教室)である。改革の中でも、雇用のミスマッチ解消と、ジョブ型雇用の導入を重視する。企業が求めているスキルと労働者が有するスキルがかみ合わないがゆえに、本来の生産力が発揮できず、非効率的な生産活動に陥ってしまう。その解消には人材の流動化が重要で、解雇規制の緩和は流動性を高めると指摘する。

 

2030年に向けて世界が取り組むべき重大課題の一つは気候変動だと断じるのは、米マサチューセッツ工科大学教授のアビジット・V・バナジー氏(中央公論3月号)である。気候変動は世界経済に大きな影響を与える。洪水や干ばつが起これば、農業が営めなくなった人々は移住を余儀なくされ、移民が増えることも想定される。しかし危機が深刻化すると自国の対策で手いっぱいとなり、移民の受け入れを停止する国も出てくるかもしれない。

バナジー氏は先進国に、気候変動に先見の明を持って対処することと、人手不足の解消につながる移民受け入れを前向きにとらえることを求める。