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三菱地所や東急、アート求める新富裕層と接点づくり

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC191I60Z10C22A1000000

 

三菱地所や東急が寺田倉庫(東京・品川)やTSIホールディングス(HD)との共同出資で立ちあげた会社「MAGUS(マグアス)」(同)が、2021年秋に本格始動した。同社は富裕層らを新規顧客として取り込みたい企業のマーケティングなどを支援する目的で、21年3月に設立された。具体的にはアートに関するイベントを企画して富裕層を集め、企業が接点をつくる場として提供する。

 

野村総合研究所(NRI、東京・千代田)によると保有する金融資産の合計から負債を差し引いた額が1億円以上5億円未満の世帯数は、19年で124万世帯だった。同5億円以上と合わせると約133万世帯で、17年から6万世帯増えた。株式などの資産価格の上昇で、金融資産を運用する個人投資家が新たに富裕層の仲間入りをした形だ。

新富裕層は、従来の富裕層と生活スタイルや好みも異なる。マグアスの上坂氏によれば、百貨店にもアートを購入したいとする問い合わせが増えているが「どのような作品を集めればいいかわからない」と悩んでいる。画廊や外商の品ぞろえではニーズに応えられないとの懸念から、アートイベントで新富裕層の好みや購買意向の把握を狙う。

三井住友FG、専任チームを編成

三井住友FGは21年11月、社内にアート専任チームを設けた。その具体化で「欧米の金融機関が先を行くアートは避けて通れない」(三井住友銀行の高橋克周プライベートバンキング営業部長)とみて策を練っていた。

三井不動産、街とデジタル融合

一方、三井不動産は既存事業への好影響とともに新たなビジネスチャンスの獲得を同時に狙う。同社の本拠地で再開発に力を入れる東京・日本橋に22年5月、専用ギャラリーを開く。サイバー空間にも同様に「ギャラリー」を設け、約20点のデジタルアートを展示販売する。著名なイラストレーターやアニメーターらが参加し、作品には非代替性トークン(NFT)をひも付けて暗号資産(仮想通貨)で購入された収益の一部を還元する。NFTアート市場の整備も進める考えだ。

寺田倉庫の寺田航平社長に聞く

――アート事業に取り組む企業が増えています。
 「特にアートのデジタル化について日本は世界に比べてかなり遅れている。その分ビジネスチャンスは大きい。大企業が消費者とアートという接点でつながったり、アートの感性を社内に取り入れていくといった活動がどんどん増えていくことが日本人がアートを身近に感じるために必要だ」

 ――何が課題となりますか。
 「どの企業も収益化に苦しむと思う。富裕層向けマーケットを主体に取り組む企業がまず伸びると思う。

「活動自体はSDGs(持続可能な開発目標)の文脈で顧客へのアピールにもなる。アートの取り組みを通じて社員の感性を磨くことが、今はない、人の感性に刺さるサービスをつくるきっかけにつながるのではないか」