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メタバースの見えぬ価値 無形資産ためるマイクロソフト

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD2408Q0U2A120C2000000

 

企業買収やデータセンターなど関連インフラへの大型投資はもう始まっている。

人気が出そうなのはアバター(分身)を使った会議やゲーム、買い物だ。利用者は拡張現実(AR)や仮想現実(VR)の機器を使い、巨大な仮想世界を体験することになる。

「実感がわかない」という人にはスティーブン・スピルバーグ監督の映画「レディ・プレイヤー1」(2018年)がお薦めだ。

暗号資産やNFTなど増える無形資産

例えば、仮想空間上の資産は企業の貸借対照表にどう表れるのか。ゲームやアバター、会議室などに関連したソフトウエアやプログラムはおおむね通常のソフトウエア、コンテンツと同様に開発にかかった費用だけが無形資産に計上される。

一方、ゲームで使われる「通貨のようなもの」やアイテム、高額なデジタルアート、仮想不動産が取引されるようになると、資産として計上されるものが増える。それらは暗号資産、非代替性トークン(NFT、唯一無二のデジタル資産であると証明できるもの)などと呼ばれ、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使って信ぴょう性が保証される。

不動産でいえば、現実世界のような登記簿は存在せず、持ち主や取引の経過を電子的に衆人環視の状態に置くしくみだ。生まれるのは渋谷や銀座のような都心の一等地から埼玉県の所沢のような郊外の土地まで多種多様で、出店したい企業が多い場所では現実のように地価が上がる。

だが、所有者が上場企業だった場合、「どんな時に時価会計、減損会計が適用されるのか」「計上されるのは無形資産か棚卸し資産か」などの問題が予想され、会計監査の世界では議論が続く。

マイクロソフトが支払うのれんは6兆円

マイクロソフトは先週、687億ドル(約7兆8000億円)で米ゲーム大手、アクティビジョン・ブリザードを買収すると発表した。

メタバースへの先行投資とみられるが、なぜその買収価格なのかは財務諸表を見てもわかりにくい。アクティビジョンは株式上場企業であり、21年9月末時点の純資産が1兆9000億円と発表資料にはある。買収額がそれを超えた部分、つまりマイクロソフトが支払うプレミアム(のれん)は6兆円弱にものぼる。

のれんとは「会計監査で認識できない見えない資産」と言われる。現在の会計基準は製造業が主役だった時代に基礎ができたため、無形資産を計測しにくい。有形資産の少ないIT企業は純資産が小さくなり、買収される際はプレミアムが大きく見えやすい。

日本の無形資産への投資は低水準

日本企業はどう動くべきか。英インペリアル・カレッジ・ビジネススクールのジョナサン・ハスケル教授らの著書「無形資産が経済を支配する」によれば、日本はデータ、人材など無形資産への投資が米欧に比べて低水準にあるという。問われているのは無形資産への感度、成長の源を見極める目であることは間違いなさそうだ。