· 

ソニーカー、「仮想敵」はメタ

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO79491030U2A120C2TCR000/

 

吉田氏のプレゼンではソニーカーがさっそうと走る映像が流れた。しかし、待ち構えるのが見通しのいい平らな道かどうかはわからない。

「友人や家族との集まり、仕事、学習、遊び、買い物、創作。想像できることはほぼすべて可能だろう」。米メタ(旧フェイスブック)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、人々がメタバース(仮想空間)で活動する効用を訴える。「大事なことにもっと時間が使える。移動の時間が減り、環境負荷も少ない」

データを見る限り、人は移動しない傾向を強めている。全国70都市を対象にした国土交通省の15年の調査によると、1日の移動回数は最低を記録した。20代の男性の場合、1987年に約3回だった平日の移動は2回を割り込んだ。

移動のためのEVと、移動を抑えるメタバース。いま2つの力学が同時に盛り上がる。この先、人の移動はどうなるのか。有力コンサルティング会社で自動車を担当する専門家8人に聞いてみた。

「メタバースで人の移動は減る」。この見方が大勢だ。代表的な移動の通勤通学など不要になるものが少なくないととらえる。メタバースの精度が増せば安価に「旅行」する方法となり、リアルな旅行にでかける富裕層とは異なる選択肢になるとの予想もある。ネットやスマートフォンが当たり前になり、外出せずに用を済ませられる環境になったのが一因と思われる。米英のデータも似た状況を示す。

ならばEVに求められるものは何か。様々な車が出現し値段が下がって魅力が増すとの指摘がある一方、電動化では不十分と考える専門家が多い。移動中の時間を有効活用できる空間にするには自動運転が必須だという。車をオンライン化し、家にいては味わえないサービスができれば、Z世代を引き寄せられるかもしれない。

メタは11日、ドアダッシュのトニー・シューCEOを取締役に迎えたと発表した。「メタバース構築に向け彼の視点に学ぶのが楽しみだ」。ザッカーバーグ氏は語る。変化は止まりそうにない。

肝心なのは移動を巡る非効率、不合理、不経済がなく、プラスを実感できる社会の実現だ。EVとメタバースも二律背反の関係ではなく、溶け合うことで光る。

こんな声も聞いた。「移動によって感動や発見が生まれる。そういう体験をモビリティー会社はつくらないといけない」。痛快さ快適さの提供をめざす点はIT(情報技術)業界も同じ。刺激し合う格好の相手でもあるはずだ。

ソニーは多様な顔を持つ。主力のゲーム事業はメタバースと密接。どこにいてもリアルな作業ができる遠隔ロボットの事業も先月、本格始動した。ソニーが掲げるパーパス(存在意義)に「世界を感動で満たす」とある。感動と移動。どんな社会をめざすか。世界観を競わなければならない。