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ハウス・オブ・グッチ公開 ブランドの闇 扱いに今昔 中野香織

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO79443880R20C22A1KNTP00/

 

1970~90年代にかけての一族の内紛と崩壊の歴史に、同時代のファッション、音楽、ブランドビジネスの実態までぎっしりと詰め込まれている。

 

実は、ブランドの暗部でもあるこの話が映画化されたことじたい、モード記事を長年書いてきた私にとって驚きだった。10年ほど前までは、雑誌によってはこのエピソードに触れると、その部分は削除された。ブランドからの広告で成り立つ雑誌は、広告主がチェックし、不都合とみなすことは掲載されない。

 

スコット監督は映画の企画を20年寝かせており「タイミングが見つけられなかった」と語っていた。もしかしたら、何らかの圧力が間接的にかかっていたのではないか。発達したSNSで透明化が進み、書籍にもなった事実をいまさら隠すこともなかろうという時代の空気が醸成され、ようやく映画化できたのではないか。自分のささやかな経験からの臆測にすぎないが、ブランド側も映画に協力しており、この話をどこに書いても削除されなくなったことに隔世の感を覚える。

関係者や遺族から「事実はああではない」とのクレームも来る状況で、自分の作品としてどっしり構えるスコット監督の勇気ある態度そのものが、映画の内容以上に感慨深い。