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東京大は2021年秋、全学で交換留学協定を結ぶ欧米などの大学に49人の学生を送り出した。
一方で日本へ受け入れた留学生はゼロ。コロナ前の19年秋は124人を派遣し、146人を受け入れていた。
東大の担当者は「この状況が続くことは交換留学の本来の形ではない」と話す。
交換留学は大学が互いに授業料を免除し合う仕組みで、派遣・受け入れの人数をそろえるのが国際ルールだからだ。
制限長期化で日本への交換留学生派遣を中止する動きも広がる。
東大、一橋大、京都大、東北大、早稲田大などによると、米国のカリフォルニア大やジョンズ・ホプキンス大、ミネソタ大、カナダのマギル大、オーストラリア国立大をはじめとする豪州の多くの大学が22年春の学生派遣の中止を決め、21年12月までに日本側に通告した。
制限緩和が進まないと見切りをつけた形だ。
派遣と受け入れの不均衡が長引くと、海外大は日本人の受け入れの中止・縮小や授業料の要求に動く可能性がある。
一橋大の太田浩教授は「英語圏の大学は交換留学生数の不均衡に特に敏感。今は我慢してくれているが、22年秋にも日本の学生の受け入れ中止が起きるかもしれない」と警鐘を鳴らす。
「再び入国規制されると知った時はむなしい気持ちになった」。
立命館アジア太平洋大(大分県別府市)2年の韓国人留学生、ハン・ダヒョンさん(24)はうなだれる。
将来は日本のテレビ局でプロデューサーとして働く夢を描く。
「このままでは日本に行かないまま3年生になってしまう。
日本語の勉強や就職活動に影響が出るかもしれない」と焦りを募らせる。
米ミネソタ大4年生で、22年春から一橋大(東京都国立市)に私費留学の予定だったスコット・シュラメルさん(25)は21年11月、大学側から「留学を許可できない」と告げられた。
担当職員からのメールには「留学を許可しても、入国できないリスクは非常に大きい」と記載されていたという。
大学から留学を止められたのは20年春、21年春に続き3度目だ。
「ミネソタ大には日本の複数の大学から交換留学生が来ている。
日本政府がなぜ受け入れないのか疑問で、この措置には大変いらだちを感じる」と話した。
大阪大国際教育交流センターの近藤佐知彦教授は「日本が規制を続けている間、既にかなりの留学生が、受け入れを続ける韓国などに流れた。
将来、日本に来る留学生数が大きく減ることを懸念している」と指摘する。
