https://www.nikkei.com/article/DGKKZO79016400W2A100C2EA1000
築40年超だけで約100万戸ある老朽マンション問題の解決に向けてようやく一歩動き出したが、資金調達の問題や賃借人への対応といった壁が立ちはだかる。
「決議要件が緩和されるだけではダメだ」
東京都中央区のライオンズマンション日本橋の上田治正理事長は話す。
築約40年で約160戸ある同マンションは昨年、2050年までの長期計画を策定した。
新築から数えれば実に70年近い遠大なプランだ。
建物を適切に修繕する計画整備と並行して建て替え推進プランもつくり、すでに数年かけて所有者の間で議論している。
上田氏は「決議要件よりもネックは資金問題。」と話す。
法改正したが…
不動産コンサルタントのさくら事務所の長嶋修会長は「過去のマンション建て替えの成功例は、建て替えた後に今より建物が大きくなるのが前提で、拡大した分を新たな所有者へ販売するスキームが大半だった」と説明する。
国も法改正でマンションの容積率緩和特例の適用拡大などを進める。
21年12月には外壁剥落などの危険、配管設備の腐食、バリアフリー不適合といった問題を抱えるなど一定の基準を満たすマンションも新たに適用対象とした。
特例で、建て替え後に床面積を広げて、その売却で資金を調達できる余地は広がる。
1979年以前の完成の場合、賃貸戸数の割合が20%超というマンションが約3割になる。
建て替え決議ができても、賃貸借契約が即座になくなるわけではない。
賃借人が退去を拒めば建て替えがストップしかねない。
賃借人に対応する新たな仕組みも検討される見込みだが、「賃借人の権利保護もおろそかにはできず、調整は容易ではない」(長嶋氏)。
