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資本主義、創り直す 解は「フレキシキュリティー」に 成長の未来図①

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODL065U70W1A201C2000000

 

北欧の新陳代謝

北欧は医療や教育の無償化など福祉国家のイメージが強いが、国民が挑戦しやすい環境も備える。

 

代表はデンマークの「フレキシキュリティー」。

 

「柔軟性(フレキシビリティー)」と「安全性(セキュリティー)」を組み合わせた政策は解雇規制が緩やかで人員削減がしやすい一方、学びなおし(リスキリング)や再就職の支援など保障を手厚くする。

 

1990年代にデンマークが導入し2000年代後半から欧州各国に広がった。

 

北欧の失業率は5~8%で推移し2~3%の日本より高いが、次に働く機会が見通しやすいため不安は小さい。

 

いま貧しくても豊かになれるチャンスも多い。所得下位20%の家庭に生まれた人の最終的な所得水準をみると、生まれたときより上位に上がれる人の割合はスウェーデンで73%と、米国(67%)より高いといった研究もある。

 

一方、米国は矛盾を抱える。

 

寿命の延びが止まったのは象徴的だ。

 

薬物・アルコール中毒や関連自殺で10年以降、計100万人以上が「絶望死」に至った。

 

寿命は14年の78.9歳で頭打ち。

 

アンガス・ディートン米プリンストン大学教授は製造業の衰退が「人々のプライドと自尊心を奪った」とする。

 

絶望死の4割弱は30~50代の白人男性。製造業を支えた中間層が多い。

 

世界の資本主義は歴史的に何度も危機に見舞われた。

 

初めは1929年の米株価暴落を引き金とする大恐慌だ。

 

米国とソ連の対立を軸とする冷戦期に「第2の危機」に襲われる。

 

「第3の危機」に

いま直面するのが「第3の危機」だ。

 

過度な市場原理主義が富の偏在のひずみを生み、格差が広がる。

 

格差は人々の不満を高め、それが民主主義の危機ともいわれる状況を生み出した。

 

資本主義と民主主義の両輪がうまく回らなくなり、世界では中国を筆頭とする権威主義が台頭する。

 

バブル崩壊から30年、日本経済は低空飛行が続く。

雇用の安全を重視しすぎた結果、挑戦の機会を奪われた働き手はやる気を失う。

行き過ぎた平等主義が成長の芽を摘み、30年間も実質賃金が増えない「国民総貧困化」という危機的状況を生み出した。

資本主義の苦悩を横目に中国は急成長を遂げてきた。

GDP成長率は日米欧をはるかにしのぐ年平均9.0%に達する。

だが成長の裏で格差が広がり、幸福度は日米欧を下回っている。

習近平(シー・ジンピン)指導部は文化大革命をほうふつとさせる「金持ちたたき」に動き、最新のデジタル技術も総動員した「統制」で資本主義と一線を画そうとし始めた。

一人ひとりの個人が自由に富と幸福を追求することで社会全体の発展を支えてきた資本主義は21世紀の新たな挑戦に打ち勝てるか。

世界は大きな岐路に立っている。