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食文化に培養肉革命 「育てる」から「細胞増やす」へ

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78143550T01C21A2MY1000/

 

イスラエルのフューチャー・ミート・テクノロジーズは6月、食肉を出荷する工場を立ち上げた。

 

「育てる」から「増やす」へ。

 

同社で肉のもとになるのは細胞だ。牛や鶏から細胞をとり、植物やたんぱく質の成分を加えた培養液で増やす。

 

多くの学説によると人類が動物の肉を食べ始めたのは250万年前以降に現れた原人からだ。

それまでは草や果実、昆虫で満足していたが、肉食動物の食べ残しを口にして味を占めた。

肉食が人類の心身を世代を超えて充実させ、文明をつくる知恵を授けた。

良質なたんぱく質によって、人類の脳はチンパンジー並みの300~350ミリリットルから、新しい原人では900ミリリットルになった。

肉への欲求は人類に動物を狩る習慣をもたらした。

ドイツで約30万年前の木のやりが見つかっている。

後の時代には投槍(そう)器や弓矢を作り、集団で狩りをした。肉が創意工夫や協調性を育んだ。

約1万年前ごろからは農業や牧畜が始まり、食料となる動物を飼い始める。

現代までにヤギや羊、豚、牛、鶏などの品種改良が続く。いつしか肉食とは家畜を食べることと同義になった。

しかし、そんな人類の食文化をバイオテクノロジーが揺るがす。

日本の有志団体「ショージンミート・プロジェクト」は、自宅で培養肉をつくる技術の普及に取り組む。将来は店で肉を購入するのではなく、家庭で細胞から育てる人も現れそうだ。

食事では食感が重要だ。今は多くの企業が家畜からとれる肉に似せたつくりにこだわっている。

また、牧草などがあれば育つ家畜を人類が手放すはずがないとの見方もある。

「身近な飼料をたやすく食料にできる家畜の需要は大きく下がらない」(農業・食品産業技術総合研究機構)

だが、細胞を食する未来の肉は、たんぱく質やアミノ酸を含む飲料や錠剤に姿を変えていても不思議ではない。

世界には18年時点で6億2500万人の菜食主義者がいる。それぞれの選択が行き着く先で、「家畜よ。これまでありがとう」と人類は叫ぶのだろうか。