認知症、財産管理の心得 後見制度知り早めに備え

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法定後見人、幅広い支援が可能

認知症で本人の判断能力が低下すると、たとえ介護が目的でも親に代わって子どもが預金を引き出したり、親の自宅を売ったりするといった財産管理をすることは原則できない。

 

こうした場合に選択肢になるのが成年後見制度だ。

 

成年後見制度には主に法定後見人と任意後見人の2つがある。

 

法定後見人の利用者は判断能力がすでに低下した人が対象。

 

まず親族などが家庭裁判所に利用を申し立て、家裁が後見人を選任するという流れだ。

 

法定後見人は本人に代わって財産管理のほか契約などの法律行為をしたり、日用品の購入などを除いて本人が結んだ契約を取り消したりすることが可能。

 

費用や労力で負担も

1つ目の制約は親族が法定後見人に選ばれるとは限らない点だ。

 

法定後見人は財産管理や生活支援の方針をまとめ、家裁に年1回報告書を提出するなどの義務がある。

こうした業務は弁護士や司法書士、社会福祉士といった専門家が慣れていることなどから、専門職が後見人に選ばれることが多い。

後見人に占める親族の割合は20年末時点で19.7%と11年末に比べ半分以下となっている。

専門職が法定後見人になると報酬費用が発生する。

報酬は家裁が決め、目安は月2万円程度。地域や管理する財産額によって違いがあり、東京家庭裁判所では財産額が1000万円超5000万円以下は3万~4万円、5000万円超は5万~6万円としている。

元気なうちに契約

一方、任意後見人は利用者の判断能力があるうちに契約するのが特徴。

合意のうえで、自分で信頼する人を将来の後見人に指定できる。

何を代行してもらうか内容を詰め、公正証書で契約書にする必要がある。

親族などが判断能力が低下したと判断して家裁に申し立てをすることで業務が始まる。

任意後見人ができることは契約書の内容に沿う。

預貯金の入出金、不動産の管理・処分、介護施設の入居契約などと具体的に決めておくことが大切だ。

任意後見では後見人の業務をチェックする任意後見監督人を家裁が必ず選任し、財産額5000万円以下で月1~2万円程度の報酬が発生する。

成年後見以外では、家族信託という商品がある。

利用者が判断能力のあるうちに家族に財産管理を任せる契約を結ぶ。

法定後見では介護費のため親の自宅を売ったり賃貸したりするには家裁の許可が必要だが、家族信託では財産管理を任された人の判断ですることができる。