https://www.nikkei.com/article/DGKKZO77309660V01C21A1MY1000/
米IT(情報技術)大手の旧フェイスブックは10月、社名を「メタ」に変えた。
同社が力を入れる「メタバース」は新たなコミュニケーションの場となる仮想空間を表す。
1992年の米空想科学(SF)小説「スノウ・クラッシュ」が描く世界が原点とされる。
注目すべきは、将来の事業を模索する大手企業が、参考にしたかどうかは別にしてSF小説に活路を見いだす形になった点だ。
SF小説は娯楽作品と思われがちだが、作家らの思考法にならえばビジネスの指南書にもなる。
世界ではSF思考が以前から話題になっていた。未来社会の試作品(プロトタイプ)をつくる意味から「SFプロトタイピング」ともいう。米国のマイクロソフトやインテルが関心を寄せ、米テスラのイーロン・マスク氏らの言動からも「SF好き」が感じ取れる。
SF小説の優れた作品は、現実離れしていながら、現実味を帯びたストーリーが展開する。
SF思考でもこの流れを取り入れる。
最初に未来を意識して脈略のないキーワードを考える。
次にそんな未来にありそうな道具を思い浮かべる。
そこで暮らす登場人物を想定し、次々と降りかかる困難や幸運を洗い出す。
「13で割り算をしないと時刻がわからない時計」が普及したとする。
現在時刻がわかりにくく、「私」は遅刻ばかり。
どこの会社でも同様の問題が起き、勤務時間を定める働き方が一変した……などだ。
知り過ぎることが創作活動の妨げになる恐れは、東京大学の植田一博教授らの実験が物語る。
スピーカーの新機能を考える課題に、専門知識が多いタイプの人は一つのことにこだわる傾向があり、アイデアの質にネガティブな影響が出た。
撮影にあたってもスピーカーだけを写しがちだった。
専門知識が少ないと視野が広く、ポジティブな影響が表れた。
ただし素人の視野の広さが生きるのは「アイデア生成の段階」と植田教授。
新製品やサービスの開発には「(専門知識にたけた)目利き役も必要だ」
SF思考でも、先入観から離れるよう促せるかが鍵を握る。
まずは広い視野で「ありえる未来」を導き、どう向き合うのかを専門知識をもとに考える。
コメントをお書きください