https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB203G30Q1A021C2000000
厚生労働省によると、2025年の国内患者数は有病率が上昇するケースで15年比4割増の730万人に拡大する見通し。
50年には1000万人を突破し、高齢者の3割近くが患うと試算されている。
認知症が進行すると基本的に介護が必要になる。生命保険文化センターの21年の調査では、毎月の平均介護費用は8万3000円で18年の前回調査から5000円増えた。
平均介護期間も5年1カ月と長期化傾向が続く。
住宅改装や介護用ベッドの購入といった一時費用の平均額74万円を合算すると、介護費用として約580万円かかる計算だ。
いずれも認知症と診断されると保険金を受け取れるタイプだが、認知症の早期発見や予防にも力を入れる。
スマホに次々と表示される画像を見ると、人工知能(AI)が視線の動きを分析。年1回のチェックで、脳の認知機能が低下していないかなどを簡単に確認できる。
認知症に関連する生活習慣病になるリスクもあわせて分析し、今後10年で入院する可能性を表示する。
「今日は西暦で何年、何月、何日、何曜日ですか?」という質問に答えるだけで、声の周波数などをAIが分析し、20秒程度で認知機能の状態を判定する。
約10分の電話で認知機能を評価する仕組みだ。
親の財産管理 家族信託を活用
認知症に備えるうえで考えたいのが財産管理の問題だ。
親が認知症と診断されると、子供が同行しても基本的に金融機関で預貯金を引き出したり、金融商品や不動産を売買したりできなくなる。
本人の資産が事実上「凍結」され、家族にとっては介護費用の捻出や資産運用で大きな壁に直面することになる。
発症後の財産管理は原則として法定代理人の成年後見人が手続きする。
成年後見制度では、家庭裁判所が選任した後見人が本人の代わりに財産管理や契約行為などを担うが、患者の家族からは使いづらいといった声が多い。
その一因として家裁が選任する後見人は弁護士や司法書士といった専門職が多く、子供など家族を後見人の候補に申し立てても必ずしも選任されるとは限らないことが挙げられる。
専門職後見人と親族で意見が対立しても、裁判所は後見人の交代を通常認めず、本人が死亡するまで資産規模に応じて月額3万~5万円程度の報酬を後見人に払い続ける必要がある。
こうした状況を受けて、最高裁は2019年に各家裁に対し「身近な親族を選任することが望ましい」と通知。
最近では親族の後見人は増えつつあるが、成年後見制度のデメリットはしっかり理解しておきたい。
一方、認知症の発症前からできる対策で注目を集めるのが「家族信託」だ。
自身が信頼する家族に財産管理を任せる契約を事前に結んでおくもので、成年後見制度では難しい柔軟な資産運用が行える仕組みとして利用が広がっている。
家族信託は民事信託の一種で、財産を託す委託者、託された財産を管理・処分する受託者、財産から利益を受ける受益者で構成する。
認知症に備えた財産管理で家族信託を活用するケースでは、基本的に本人が委託者と受益者を兼ね、子供や配偶者といった親族が受託者となって信託契約を結ぶ。
信託財産には不動産や現預金、金融商品などを具体的に設定する。
事前に契約、柔軟な資産活用が可能に
家族信託の最大のメリットは「契約の範囲内で機動的・積極的な資産活用が可能になる」(司法書士の村山澄江氏)ことだ。
例えば、契約で「受益者の老後に資するように信託財産を運用する」とすれば、受託者はその目的に沿って財産を処分できる。
不動産を貸し出し賃貸収入を得たりして、収益を受益者の介護費や医療費に充てるといったやりくりが可能だ。
死後に残った財産の承継先なども盛り込めるため、遺言のような役割も果たせる。
コメントをお書きください